
ビジネスの現場でよく耳にする「ブランディング」。なんとなく大切なことだと意識はしていても、いざ「ブランディングの意味は?」と聞かれると上手く答えられない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ブランディングの目的や種類、得られるメリットなどをわかりやすく解説。大伸社の経験をもとに、ブランディングの基礎を体系的に学べる内容にまとめています。ブランディングについて理解を深めたい方は、参考にしてみてください。
- 目次
ブランディングとは?

ブランディングとは、顧客の頭に浮かぶ独自のイメージを確立するための努力」といえます。
ブランディングは、BtoC企業や大手企業による、いわゆるテレビCMや新聞広告を打つようなことだけではありません。様々な行動を積み重ね、ターゲット顧客から企業のあるべきブランドイメージを連想してもらうことを目指す必要性があります。
ブランドは高級品だけの話ではない
ブランドと聞くと、海外の高級ファッションや高級車をイメージする方が多いかもしれません。しかし、ブランドとは「区別するための目印」が語源であり、高級品だけに限った話ではありません。例えば、近所の親しみやすい定食屋さんや迅速で丁寧な対応をしてくれる配送業者も、顧客から信頼され選ばれ続けているのであれば立派なブランドです。企業規模や価格帯に関わらず、顧客から「選ばれる理由」が明確であり、その約束を守り続けているかどうかが重要なのです。あらゆる企業にとって、自社ブランドを確立することは事業継続の要となります。
ブランドを形成する要素
ブランドという形のない概念を顧客に認識させるためには、具体的な手がかりが必要です。これらを「ブランド要素」と呼びます。ブランド要素は大きく分けて「言語的要素」「視覚的要素」「感覚的要素」などで構成されています。
具体的には、企業や商品の顔となる「ブランド名」や「ロゴマーク」、特徴を端的に伝える「キャッチコピー」や「タグライン」、世界観を表す「ブランドカラー」や「パッケージデザイン」などが挙げられます。さらに、耳に残る「ジングル(音楽)」や店舗特有の「香り」、Webサイトの「ドメイン」などもブランドを識別させる重要な要素です。これらの要素が組み合わさることで、顧客は直感的に「これはあのブランドだ」と識別できるようになります。
顧客視点でのブランドのコア策定
顧客にブランドイメージを連想してもらうためには、顧客視点で「ブランドのコアを定めること」が必要です。ブランドのコアを定めることで一貫した取り組みを行えるようになり、確固たるブランドを確立できます。

ブランドのコアは3つのステップで策定をしていきます。
- 顧客が望み、競合ができずに、自社ができることを把握する
- 顧客も望み、従業員も理想とし、自社だからこそできる世界を描く
- 理想と現状の自社とのGAPを改善するためにできることを考える
ブランディングでは、上記に向けて活動をし続けることが大切です。理想や期待を裏切る行動をしないことにも注意を払わなければなりません。
1. 顧客が望み、競合が出来ずに、自社ができることを把握する

顧客が望み、競合が出来ずに、自社ができることとは、自社が保有する現状の武器を意味します。
まずはこの武器が何かを知ることが重要です。顧客経験や従業員の活動において、現状の顧客の期待と評価、自社のイメージ、競合のイメージを調査し、把握をしていきます。
2. 顧客も望み、従業員も理想とし、自社だからこそできる世界を描く

自社だからこそできる世界を描くには、2つのGAPを知る必要があります。まずは、顧客が理想とするブランドと現状の自社とのGAPを知ることです。
続いて、自分たちが理想とするブランドと現状の自社とのGAPを知ることが求められます。GAPを知ることができた後は、顧客の理想を踏まえながらも、自社が理想とするブランドの構築を検討していきます。
3. 理想と現状の自社とのGAPを改善するためにできることを考える

続いて、理想と現状の自社とのGAPを改善するために、何ができるかを考えます。
ここでは、半永久的に変わらない、本来目指したい姿をミッションやパーパスとし、そこに行きつくための5〜10年後の姿をビジョンとして描くことが重要です。
この結果、過去から大切にしてきたこと、今の自社の強みから、未来へのつながりをストーリー化することができます。 ブランドのコアを策定するにあたり、有効なフレームワークがMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。MVVは、企業の存在意義、目指すべき未来、そしてそれを実現するための行動指針を明確に示すものです。また、ブランドを伝えるためのツールとしても機能します。弊社の場合は、以下の内容を掲げています。
| MVV | 大伸社コミュニケーションデザインの場合 |
|---|---|
| ミッション | 未来に挑戦する人と企業にデザインの力を |
| ビジョン | 共に考え 実践する 価値の共創パートナーへ |
| バリュー | 誠実 / リスペクト / 連携 / 感謝 / 挑戦 / 探求 / 情熱 |
詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:ミッション・ビジョン・バリューとは?事例から作り方までご紹介
ブランディングの目的
では実際にブランディングを行うにあたって、その目的はなんなのでしょう。
ブランディングを行おうと踏み出す理由には主に以下のようなものがあります。
- 事業の変革を促したい
- 事業の多角化が進み、自社らしさが曖昧になってしまった
- 他社との差別化要因を見出せず、事業が停滞しているので再興を図りたい
- メッセージやビジュアルがバラバラでコミュニケーションに一貫性がない
これらのパターンに共通するのは、「ビジネスの成功・成長をブランディングによって成し遂げたい」ということです。
ブランディングはあくまで手段であり、ビジネスの成功・成長のためにブランディングが貢献できることは何かを考えることが重要なのです。
ブランディングの効果

ブランドのコアをしっかりと定めた上でブランディングを行うと、上図のような好循環が回り始めます。
ブランドのコアが市場に受け入れられることで、ブランドに愛着を持つユーザー(ファン)が生まれ、顧客のエンゲージメントが向上します。
その結果、顧客満足度もアップすることで売上拡大や収益性向上を実現させることが可能です。これにより、社会的に自社の認知度と評判が向上している実感が得られるようになることで、従業員エンゲージメントの向上にもつながります。
さらに、従業員のモチベーションがアップすれば、スキルや生産性の向上だけでなく、商品やサービスの品質向上も期待できます。
このように、ブランディングを行うことで、自社のビジネスに好循環が生まれるのです。
ブランディングの分類
ブランディングには、発信する対象者として大きく2つに分かれます。アウターブランディングとインナーブランディングです。それぞれの解説をします。
アウターブランディング
アウターブランディングとは、社外に向けたブランディングのことを指します。企業の理念や価値を市場に伝え、顧客や取引先に「どのような企業か」を印象づけます。
例えば、広告、SNS、企業サイト、プレスリリースなどを通じて、ブランドの世界観や自社らしさを発信する取り組みを行います。単なる認知度向上ではなく、企業が大切にする価値観や強みを市場に浸透させることが重要です。
インナーブランディング
インナーブランディングとは、社内に向けたブランディングのことをいいます。社員一人ひとりが自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や会社の目指すべき方向性を理解し、自分ごととして体現できるようにすることが目的です。
ブランドの理念が社内で共有されていなければ、外部に対して一貫したメッセージを伝えることはできません。
ブランドを社内に伝えるツールには、社内共有のためのツールやブランドブック、クレドブック、社内報などの資料、ノベルティグッズなどがあります。
まずはインナーブランディングの地盤を固めてから、アウターブランディングに着手するという段取りが一般的です。
関連記事:インナーブランディングとは?
ブランディングの種類
以下では、代表的なブランディングの種類を紹介します。
- コーポレートブランディング(企業ブランディング)
- パーパスブランディング
- 採用ブランディング
- 地域ブランディング
- オフィスブランディング
- BtoBブランディング
- 製品 / サービスブランディング
- サステナビリティブランディング
- グローバルブランディング
コーポレートブランディング(企業ブランディング)
コーポレートブランディングとは、ブランド構築によって企業そのものの価値を高めるためのブランディングです。企業ブランディングともいいます。
単に企業のロゴやキャラクター、広告を作成することではありません。企業の本質的な価値を明確にし、それを社内外に一貫して伝えることで、顧客との長期的な信頼関係を築き、企業の持続的な成長を支えるための活動です。
ブランディングによって日々イメージを更新することで、企業イメージを良くし続ける取り組みのことを指します。
関連記事:コーポレートブランディングとは?手法や事例、効果を解説
パーパスブランディング
コーポレートブランディングを行う中で、自社が社会に存在する意義や理由、どのような価値を提供するかを見つめなおし検討し、定義し、世の中に発信することを軸にブランディングを行う戦略です。
「なぜその企業が社会に存在しているのか?」「どんな貢献を社会に行うのか?」といった視点から、企業の原点となる考えや根拠を表します。この活動により、社会において自社が存在する意義や与える影響を世間に認知してもらい、多くの共感や信頼を獲得することができます。
関連記事:パーパスブランディングとは?企業の存在意義を示すブランディング手法
採用ブランディング
採用ブランディングとは、転職者や新卒の方に、自社の魅力をより魅力的に分かりやすく伝えることでエントリーや内定辞退を防ぐ取組を行うことです。競合との差別化や自社ならではの強みが伝わらなければ採用に至らない為、まずは自社の魅力作りを先行して行い、まだ社会に出てない大学生に魅力的に伝えるにはどのような言葉やビジュアルであれば伝わりやすいか?を定義、発信することで、企業と価値観の合う人材を集めやすくなります。ブランドコアに共感した社員の定着率の向上が見込めます。
関連記事:求職者をファンにする」採用ブランディングの考え方とは
地域ブランディング
地域ブランディングとは、その地域が持つ独自の価値や魅力を明確にし、様々な角度から独自のアイデンティティを広く発信する取り組みです。地域色を出した特産品の開発やPR活動、地域の観光資源を活かしたイベントの実施などが挙げられます。
進学や就職で地方の人口が減少している課題から、地域を「ブランド」として広めていく必要性が高まっています。コロナ禍を経て都会からの移住者が増えている状況も、近年地域ブランディングへの注目が集まっている要因の一つです。
地域ブランディングは地域のイメージ向上や、経済活性化などを目的としています。
関連記事:自治体が目指す 地域ブランディングとは 事例から学ぶ効果的な戦略と進め方
オフィスブランディング
オフィスブランディングとは、オフィスを社員が働きやすく、かつブランドの価値を高められる場所にするためにリニューアルする取り組みです。社員のモチベーションの向上につながるだけでなく、来客の際に企業の理念を伝えることにもつながります。
関連記事:オフィス(空間)ブランディングを成功させるポイントとは?事例もあわせて紹介
BtoBブランディング
BtoBブランディングとは、BtoB(企業間取引)において自社のブランド価値を認知してもらい、顧客との信頼関係を構築するためのブランド戦略です。
BtoB企業では、対象顧客が絞られるため、一般的な認知度を上げるよりも、ターゲットに特化したブランディングが重要になります。それゆえ徹底した顧客視点に基づいた戦略が必要です。
顧客のニーズを満たす独自の強みを抽出し、信頼性や専門性を打ち出すことで、競合との差別化や競争力の強化を実現します。
関連記事:私たちが手がけるBtoBブランディングの考え方とステップ
製品 / サービスブランディング
製品 / サービスブランディングとは、特定の商品やサービスの価値を明確にし、競合との差別化を図るブランディングです。
製品・サービスの機能や品質、独自性、ブランドストーリーを訴求することで、消費者に選ばれやすくするための取り組みです。商品の魅力を視覚的に伝えるパッケージやロゴマーク、キャッチコピーも、製品 / サービスブランディングに含まれます。
サステナビリティブランディング
サステナビリティブランディングは、環境や社会に配慮した取り組みをブランドの核に据えたブランディング戦略です。CO2削減や森林保護など、「持続可能な社会を目指す」というサステナビリティの考え方に基づいた行動から、自社のブランド価値を高めます。
また、サステナビリティに関するレポートを作成することで、企業のコアをさらに発信し定着させることができます。
グローバルブランディング
グローバルブランディングとは、海外市場を視野に入れ、世界中の顧客に向けたブランディングを行う手法です。顧客視点に基づき、各国で一貫したブランドイメージを保ちつつ、多言語対応や文化に配慮した戦略が求められます。
海外市場における自社のブランドイメージを明確にするために、顧客と社内のブランドイメージを調査・把握し、ブランドのあるべき姿を定義する必要があります。
ブランディングで得られる企業側のメリット

ブランディングを行うことで得られる企業側のメリットは以下の通りです。
- 価格競争から脱しやすくなる
- マーケティングコストが下がる
- 社員のモチベーションが上がる
- 優秀な人材を集めやすくなる
価格競争から脱しやすくなる
自社ならではの強みを打ち出すことで、価格競争から脱しやすくなることが大きなメリットです。ブランドならではの価値を見出し、育てることは、他の競合商品・サービスとの違いが認知される、識別化につながります。
これにより、業界内で独自性のあるポジショニングを確立できるようになります。ユーザーに新しい選択肢を提示できれば、自然と価格競争から脱却できるでしょう。
マーケティングコストが下がる
マーケティングコストが下がることも、ブランディングを行うメリットです。
通常、新規顧客の獲得には広告宣伝費などの集客コストがかかります。しかし、ブランドが確立できていれば、Webマーケティング施策の一つである口コミの拡散やSNSでのシェアなどによる新規顧客の獲得が期待できます。
広告に費用を割く割合が少なくなり、集客コストを削減できるでしょう。
社員のモチベーションが上がる
ブランディングが成功すれば、自社ブランドへの誇りが生まれ、社員のモチベーションも上がりやすくなります。企業が大切にしている価値観や理念に共感して働く従業員が増えればエンゲージメント率が高まり、離職率が低減するだけでなく、日々の業務の品質も向上します。
優秀な人材を集めやすくなる
企業ブランドが確立されると、求職者にとって魅力的な企業として認識されやすくなります。働きがいや社風の透明性が高まることで、企業文化に共感した優秀な人材が集まりやすくなります。
ブランディングで得られる消費者側のメリット

企業がブランディングを行うことで、消費者側にもメリットがあります。ブランディングで得られる消費者側のメリットは以下の通りです。
- ストレスなく商品を選べるようになる
- 満足感を得やすくなる
- 商品選びの失敗を避けられる
ストレスなく商品を選べるようになる
商品やサービスのブランドイメージが確立していれば、消費者はストレスなく商品を選べるようになります。
現代社会はモノも情報も溢れかえっており、商品を探して選ぶことに疲れてしまう人も多いものです。明確なブランドイメージがあることで消費者が商品を選ぶ際の指針となり、商品の選択肢が絞られます。
満足感を得やすくなる
ブランドの価値が明確であるほど、消費者は「この商品を買ってよかった」と満足感を得やすくなります。そのプロセスで重要な役割を果たすのが、自己投影です。
自己投影とは、自己投影とは商品の購買や利用を通じて「自分はどんな人間か」を示すことです。PCならMacBook、車ならテスラなど、ブランドは持ち主そのものにも何らかの評価をもたらします。
顧客は特定のブランドを選定することで、自分自身のイメージを表現することができます。ブランドが提供する価値やメッセージ、ブランドの名前やロゴから連想されるイメージが、顧客の自己イメージと一致する場合、顧客はそのブランドに対して強い愛着を持ち、満足感を得やすくなるのです。
また、顧客がブランドの価値観や理念に共感することで、さらに自己投影が強化されます。これにより、顧客はブランドとの関係を深め、満足感を得ることにつながります。
商品選びの失敗を避けられる
ブランドが確立されていると、どのような価値が提供されるのかが事前にわかっているため、「思っていたものと違った」といった事態に陥ることなく、スムーズに商品を選べます。複数の商品や情報を比較し、調査する労力も不要です。
ブランディングの手順

ここからは、ブランディングのプロセスと手順について解説します。ブランディングは、5つの手順で行います。
- ブランディングプロジェクトの目的を設定する
- 現状を分析する
- ブランドコアの定義
- インナーブランディング / アウターブランディングの実施
- 効果検証と改善
1. ブランディングプロジェクトの目的を設定する
ブランディングを始める前に、まずプロジェクトの全体像を明確にします。ブランディングを行う目的や実施範囲を定め、チームの役割を定めます。
目的をはっきりと把握し、各工程での判断基準も明確となり、様々な優先順位もつけやすくなります。「ブランディングの活動を通じて何を果たしたいのか?」といった視点から、プロジェクトの設計を行いましょう。
2. 現状を分析する
次に、現場の分析を行います。ブランドを確立するために、「自社」「顧客」「社会」「競合」の4つの視点から分析を行います。
理想のブランドの姿として、「自社のありたい姿」と「顧客からの期待」が重なる部分がブランドコアの候補になります。その上で、競合が提供していない独自のポジショニングを取ることが理想です。以下のような外部環境分析・内部環境分析のフレームワークを取り入れながら、現状理解や把握に努めましょう。これらの分析方法に関して、具体例を上げながらみていきましょう。 これらの分析方法に関して、具体例を上げながらみていきましょう。
- PEST分析
- PESTLE分析
- 3C分析
- 4Ⅽ分析
- ファイブフォース分析
PEST分析
PEST分析 とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字を取った言葉で、外部環境をこの4 つの観点から理解しようとするものです。この分析を、コンビニエンスストア業界を例に挙げ、分析してみると以下のようになります。
Politics(政治)
・消費税の増税
・営業時間(24時間営業)に関する制限が緩和される
Economy(経済)
・店舗数の増加
・原料価格の高騰
・コロナによって景気が悪くなっている
Society(社会)
・少子高齢化に伴う購買力の縮小
・地方の店舗の収益性低下
Technology(技術)
・セルフレジの開発・普及
・キャッシュレスの普及
コンビニエンス業界には、コストに関わる多くの問題が挙げられます。しかし、営業時間に関する制限緩和やセルフレジの開発・普及によって長時間労働の防止や無人店舗の運営が期待でき、人的コストの削減が実現できるでしょう。こういった分析から、競争力を維持するためにはセルフレジの開発・普及を進めたり、少子高齢化という逃れられない課題に対しては店舗縮小を検討するなどの戦略が考えられます。
PESTLE分析
また、「PEST分析」に加え、環境やリスク分析を行うためのフレームワークである「PESTLE分析」というものがあります。「PESTLE」とは、6つのマクロ環境「政治的要因(Political)」「経済的要因(Economic)」「社会的要因(Sociological)」「技術的要因(Technological)」「法的要因(Legal)」「環境的要因(Environmental)」の英語の頭文字を取ったものです。「PEST分析」にさらにマクロ環境が加えられることで、より高度な環境分析を行うことが可能になります。
SWOT分析
「SWOT分析」とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、
Threat(脅威)の頭文字を取った言葉で、その名の通り、強み・弱み・機会・脅威の4 つを漏れなく挙げることで自社の現状を分析する手法です。このうち強みと弱みはその事業自身が持つもので「内部環境」と呼ばれます。また機会と脅威は社外から与えられるもので「外部環境」と呼ばれます。
実際にトヨタ自動車を例に当てはめると以下のようになります。
Strength(強み)
・世界で強い販売力/ブランド力を誇る
・高い営業利益
・自動運転技術への積極的な投資
Weakness(弱み)
・軽自動車の生産にこれまでそれほど力を入れてこなかった
Opportunity(機会)
・発展途上国における自動車産業の市場拡大
・日本国内では自動運転機能を搭載した自動車を受容する法整備が進む
Threat(脅威)
・日本国内の人口減少に伴い、市場縮小が想定される
・家族形態の変容に伴い、普通車、大型車の需要減少が見込まれる
3C分析
市場を理解するためのフレームワークとして代表的なものが「3C分析」です。3C とは、Customer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合)の3 つのC を意味しています。
実際に任天堂を例に当てはめると以下のようになります。
市場・顧客
・国内外でゲーム市場が大きく伸びている
・2020年からはコロナ禍により、巣ごもり需要の恩恵を受けている
・1980~1990年代の世代は、ゲーム離れが進んでいる
競合他社
・スマホの普及により、幅広い世代がソーシャルゲームで遊んでいる
・クラウドゲームが競合になる可能性がある
・FPSなどコアなファン層を狙ったゲームが増えている
自社
・マリオやカービィなど歴史ある人気キャラクターが確立
・2017年に発売したNintendo Switchがロングヒット
・キャラクターグッズなど、IP(知的財産)による収益も多い
4C分析
4Cとは顧客の購買意思決定に影響を与える4つの要素「顧客価値(Customer Value)」「価格(Cost)」「利便性(Convenience)」「コミュニケーション(Communication)」の4つのCを意味しています。4C分析では、その4つを顧客側の視点で捉え、市場調査を行い、各項目の分析を行っていきます。実際にスターバックスを例に当てはめると以下のようになります。
顧客価値(Customer Value)
・人々が気軽に集える、家庭でも職場でもない「第3の場所(サードプレイス)」で本場のコーヒーが楽しめる
価格(Cost)
・1杯300~500円と比較的リーズナブルな価格設定
利便性(Convenience)
・人の往来が多い都市部の立地に集中的に店舗を出す「Main&Main」戦略
コミュニケーション(Communication)
・接客のクオリティーが高い
・カップにメッセージを書いて提供するなど、スタイリッシュな接客
ファイブフォース分析
さらに詳しく業界の構造を把握するためのフレームワークとして「ファイブフォース(5F)分析」も存在します。
ファイブフォース分析とは、アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターが提唱する業界分析手法の一つで、業界の構造を把握するためのフレームワークです。
5つの要素とは「既存競争者同士の敵対関係」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」をさしています。この5つの要素を一つ一つ把握し、力関係が弱ければその業界の収益性は高く、強ければ収益性は低いということになります。
この分析を行うことで、自社が属している、またはこれから参入を検討している業界の現在の状況を明らかにすることができ、より一層深く現状を理解することができるのです。
4C分析に引き続き、スターバックスを例に当てはめると以下のようになります。
既存競争者同士の敵対関係
・タリーズやドトールなど、業界内の競合他社の脅威は強い
新規参入者の脅威
・他の飲食店がコーヒーやデザートに注力するなど、新規参入の脅威が強まるリスクがある
代替品の脅威
・コンビニのコーヒーなど、代替品の脅威は強い
売り手の交渉力
・原料の仕入れ先は数が多く売り手の交渉力は弱いものの、好条件の土地や店舗については売り手の交渉力が強い
買い手の交渉力
・コーヒーを購入できる店の選択肢は多く、買い手の交渉力は強い
3. ブランドコアの定義

現状調査をもとに、ブランドコアの設定を行います。ブランドコアを軸に一貫した取り組みを行うことで、確固たるブランドを確立できます。
企業としての志を定める「P-MVV」と、ユーザーにとっての価値を3つの視点で定める「ブランドベネフィット」を定めることで、ブランドコアを設定します。
これらは企業内の人間の思いがベースとなるため、社内メンバーにおけるワークショップ形式で議論を重ねながら作り上げます。 ワークショップは多くの場合4 つのフェーズに分けて行われます。パーパス、ビジョン、ミッション、バリューに対応します。この議論を通じて、下図のワークシートに言葉を埋めていくことで、P-MVV は形作られていきます。
4. インナーブランディング / アウターブランディングの実施
ブランドコアが決まったら、具体的な施策に落とし込みます。
具体化と実行のフェーズにおいては、まずはインナーブランディングを進めて、社内に浸透した段階でアウターブランディングに進むという流れが理想的です。
社内に浸透しないうちに社外に対してブランディング活動を行っても、一貫性がなくなってしまい、顧客に混乱を与えてしまう可能性が高まるからです。統一されたブランドイメージを確立させ、社内外に届けることで、ブランドへの信頼と愛着を深めることができます。
インナーブランディングでは、ブランドベネフィットなどのブランドメッセージを落とし込んだクリエイティブであるブランドブックやムービー、クレドブック、社史、社歌の制作、社内向けノベルティの作成、社内イベントの開催などがあります。
アウターブランディングは、まず顧客視点によるブランドターゲットやペルソナの設定、カスタマージャーニーの策定をすることが肝心です。
客視点でカスタマージャーニーを考えるために、まずはペルソナを設定することが一般的です。ペルソナとは、ターゲットである顧客を具体的にイメージしたものです。人柄やライフスタイルにまで踏み込んだリアルな人間像を設定することによって、カスタマージャーニーマップを作成する側も感情移入することができ、顧客の視点でものが見られるようになります。
一連の顧客体験をブランド体験として洗い出した後、要所要所で「キーとなるブランド体験」をどのように提供するかを考えるとより有用なマップとなります。これをもとにブランド体験の見直しができたら、「ブランドの定義」と「ビジュアルアイデンティティ」の求辰の観点からブランドを統一するルールを作っていきます。「ブランドの定義」ではブランドコンセプトやブランドメッセージの意味などを含みます。「ビジュアルアイデンティティ(VI)」はロゴやブランドカラー、キーグラフィックなどになります。
そしてこれらの定義に則った形で、アウターブランディングの取り組みを実施していきます。その取り組みやツールは、ブランドを想起させるトリガーとなるブランドロゴの作成から、WebサイトやSNSでの発信、メディア広告の運用、イベントの開催、展示会への出店、店舗空間の変更まで多岐に渡ります。
関連記事:ブランディングでも重要なペルソナ設定。その解像度を上げるポイントとは?
関連記事:カスタマージャーニーの作り方
5. 効果検証と改善
ブランディングに取り組み始めてから一定期間が経過したら、効果の測定も行いましょう。ユーザーリサーチなどで得た数値をもとに定点で観測を実施し、どのような取り組みが評価されているのか見直すことが大切です。
ブランディングは時間を要します。継続的に行う必要があり、市場や顧客の変化に合わせて戦略やペルソナ像を定期的に見直したり、効果測定と改善を繰り返したりすることも必要です。
なお、ブランディングの詳しい手順については、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:ブランディングの方法・手順とは?
【課題別】ブランディング戦略のやり方
ここからは、企業が抱える課題別にブランディング戦略のやり方を紹介します。
- 初めてブランディングを行う企業
- ブランドの定義はされているが、社内浸透ができていない企業
- 社外へ適切に伝える内容/手段が決まっていない企業
初めてブランディングを行う企業
初めてブランディングを行う企業の場合、【フェーズ1】プロジェクト設計、【フェーズ2】現状理解、【フェーズ3】ブランドコアの定義、【フェーズ4】具体化と実行、【フェーズ5】効果検証と改善という5つのプロセスに沿ってブランディングを進めましょう。その後【フェーズ4】と【フェーズ5】を繰り返す必要があります。
ブランドのコアが明確でなく、ブランドとしてのビジョンや志が見える化されていないのであれば、【フェーズ1】からの取り組みが必要です。
関連記事:ブランディング戦略とは
ブランドの定義はされているが、社内浸透ができていない企業
ブランドが定義されている場合、必ずしも全ての手順を踏む必要はありません。「ブランドの定義はされているが、社内浸透ができていない企業」の場合、フェーズ4の具体化と実行から始めてみるとよいでしょう。
特に、インナーブランディングの見直しに注力することが重要です。
社外へ適切に伝える内容/手段が決まっていない企業
社外へ適切に伝えるための内容や手段が決まっていない場合も、具体化と実行のフェーズから取り組みましょう。インナーブランディングが問題なく済んでいる場合は、アウターブランディングが重要となります。
ブランディングを成功させる3つのポイント

最後に、これからブランディングに取り組む方が特に意識すべき3つの成功法則をお伝えします。多くの企業が陥りやすい失敗を避けるための重要な視点です。
全ての活動でメッセージに一貫性を持たせる
最も重要なのは「一貫性」です。ロゴのデザイン、Webサイトの文章、営業担当者の振る舞い、電話応対に至るまで、あらゆる場面でブランドのメッセージが統一されている必要があります。どこか一つでも矛盾があると、顧客は違和感を覚え、信頼を寄せることができません。「私たちはこういうブランドだ」と決めたら、全社員がそれを理解し、日々の業務の中で体現し続けることが求められます。一貫性が積み重なることで、初めて強固なブランドイメージが形成されます。
成果を急がず長期的な視点で取り組む
ブランディングは即効性のある施策ではありません。人の心の中に信頼や愛着を育てるには時間がかかります。広告を出せばすぐに売上が上がるプロモーションとは異なり、数ヶ月、あるいは数年単位でじっくりと腰を据えて取り組む覚悟が必要です。短期的な売上の数字だけを見て「効果がない」と判断し、すぐに方針を変えてしまうのは一番の失敗パターンです。蒔いた種が芽を出し、花を咲かせるまで、信じて水をやり続ける継続力が試されます。
常に顧客の視点を忘れない
ブランドを作るのは企業ですが、ブランドの価値を決めるのは顧客です。企業側が「当社は高級ブランドだ」と主張しても、顧客がそう感じなければそれは独りよがりに過ぎません。ブランディングを進める中で、「これは本当にお客様にとって価値があるか?」「お客様はどう感じるか?」という視点を常に持ち続けることが大切です。顧客の声を聴き、変化するニーズに寄り添い続ける姿勢こそが、長く愛されるブランドを作る唯一の方法です。
事例で見るブランディング

ここからは、実際にどのようなブランディング事例があるのかをご紹介します。
- 「企業」ブランディングの成功事例
- 「事業」ブランディングの成功事例
- 「サステナブル」ブランディングの成功事例
- 「地域」ブランディングの成功事例
「企業」ブランディングの成功事例
企業ブランディングに成功したスターバックスの事例です。「The Third Place」(自宅でも職場でもない、「第三の場所」)というブランドコアを定め、プロダクトやサービス、店舗空間、社員教育を徹底しました。一貫性のある「おもてなし」を実施することで、顧客にとって真に安らぐ場所を提供し、世界90ヵ国以上に展開する一大グローバルチェーンに成長しました。
しかし、スターバックスでは、2007年から2008年にかけて安定的に売上高は増えたのに利益が半減したことがあったといいます。原因は教育が不十分なバリスタが店頭に立っていたり、売り上げ向上のためにコーヒー以外の商品が多く販売されていたりしたことで「何の店かわからなくなってしまった」ことです。これにより、既存店での売上高の伸び率がマイナスになってしまいました。
この窮地を救うべくCEOに復帰した創業者のハワード・シュルツ氏は、経営合理化に利益率の向上策を採るだけでなく、「原点回帰」を実施しました。多少の無駄があっても、「スタバらしさ」を取り戻そうと決意したといいます。シュルツ氏は、リスクを負いながらもバリスタの再研修や新しいコーヒーの商品開発を行い、スターバックスらしさ=「The Third Place」を取り戻すことができました。そして今もなお成長を続けています。
「事業」ブランディングの成功事例
弊社でも数多くのブランディングを手がけているなかで、株式会社NTTドコモ様(以下、NTTドコモ)のOpen RANサービスブランド「OREX®」の事例をご紹介します。
「OREX®」は海外向け新事業であり、こちらのサービスブランディングをご支援しました。
サービスブランディングを実施する前は、海外向け新事業のサービス内容が分かりづらく、潜在顧客へのブランド浸透や社内での共通認識醸成に課題がありました。そこで弊社では、社内メンバーを巻き込んだワークショップを通じてブランド構築を提案・実施し、ネーミング、ロゴ、スローガン、ビジョン、世界観を策定しました。また、海外展示会でのブランド披露目を支援し、PRチームとして通年でサポート、事業本格化に伴う新会社設立も支援しております。
上記のような活動を通じて、社内メンバーの共通認識が醸成されたと共に、お披露目活動によって国内外でのメディア露出が増加し、サービス認知度が向上しております。
「サステナブル」ブランディングの成功事例
サステナブルブランディングでは、株式会社丸運様の事例をご紹介します。
株式会社丸運様は、2021年度からESG経営へと移行する中で、より長期的に社会課題に取り組む方向へと舵を切り、レポートの発行によりブランドイメージの向上やSDGsの意義づけ、社内外への認知を広めていきたいとご相談いただきました。
初のレポート発刊ということで、提案前にレポートの特性や必要性、トレンドについてのレクチャーを実施。理解を深めていただいた上でご要望をヒアリングしました。最終的には、「ESGへの取り組み・実績を軸に、最適な物流ソリューションを提供する丸運のポテンシャル・企業価値をステークホルダーに知っていただくレポートを目指す」ことに決定。
結果、初めてのレポートということで注目度も高く、二年目のサステナビリティレポートの制作も行うこととなりました。
アウターブランディングの中の一つの取り組みとしてサステナビリティレポートを作成し、企業のブランドコアをさらに発信・定着できた事例です。
「地域」ブランディングの成功事例
「地域」ブランディングでご紹介するのは、「島×生活×アート」のキーワードでブランディングに成功した、瀬戸内海の「直島」の事例です。
瀬戸内国際芸術祭はもちろん地域ブランディング成功の要因といえますが、それに加え、直島は「体験価値によるブランド化」が行えているというのが大きな特徴です。
現代では「モノ」だけでなく「コト」に価値を見出すという経済の流れがあり、単なる商品価値ではなく「体験価値」が重視されています。そんな中、直島には海を渡って島を歩く中での感動体験や、島民と多様な形で交流する中での交流体験など、直島でしか感じることのできない価値があります。
ブランディングとマーケティングの関係性
最後に、よく混同されがちなマーケティングとブランディングの関係についてご説明します。
ブランディングが、「頭に浮かぶ独自のイメージを確立するための努力」である一方、マーケティングは「ブランドの価値を自分たちで伝える取り組み」であるといえます。
「共創」や「パーパス」がブランドの重要な要素となるに従い、現在ではブランディングをマーケティングよりもさらに経営に近いものとする見方が優勢となっています。この考えに基づくと、戦略及び戦術の階層は下の図のようになります。

ブランドとは「ユーザーの頭の中に浮かぶ魅力的な独自のイメージであり、他社に真似されにくい、その企業のビジネス資産」という定義を受け入れるならば、マーケティング戦略が変わることでブランドが変わる可能性はありません。また、「独自のイメージであるビジネス資産」としてのブランドを変更できるのは、経営戦略の大きな変更しかありません。
以上から、現代においてはブランディングとマーケティングは別物で、ブランド戦略はマーケティング戦略より優位に位置付けられるものと考えるのが良いでしょう。
ブランディングで事業を成功・成長させるために

本記事では、「ブランディングとは何か」という基本的な認識から事例や戦略、活用方法など詳しい部分まで幅広く解説しました。
ブランディングでは目的設定や現状分析、ブランドコアの定義など、いかに基礎を組み立てられるかが重要です。しかし、ブランディングを成功させることは簡単ではありません。的確なブランディング戦略や戦術を組み立てるには、プロのアドバイスを受けながら進めることがおすすめです。
ブランディングにご興味をお持ちなら、株式会社大伸社コミュニケーションデザインにご相談ください。
弊社では、ブランド策定・インナーブランディング、アウターブランディングの3つの領域から企業・プロダクトのブランディング支援を行っている企業です。
ブランディングからマーケティング戦略、デジタルコンテンツ、クリエイティブ制作まで、お客様のニーズに最適なソリューションを幅広く提供しています。VR/AR/MRなどの新しい技術も積極的に取り入れています。
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【参考文献】
『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)
Heskett, Sasser & Schlesinger (1997) The Service Profit Chain
DCD事例紹介 極東産機株式会社様/オンライン葬儀サービス『ichi-e(いちえ)』のブランディング
https://www.daishinsha-cd.jp/work2/ichi-e/
2015 年度事例研究現代行政Ⅰ最終レポート『直島における地域活性化の事例研究」
https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/graspp-old/courses/2015/documents/graspp2015-5140040-5.pdf
innova 「成功事例・失敗事例から見るブランド戦略の効果」
https://innova-jp.com/branding-strategy/



株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン チーフ ブランディングディレクター コピーライターとして、広告・宣伝のクリエイティブ開発の経験を経て、ブランディングに特化したプランニング・コンサルティングを担う現職へ。大手上場企業から中小企業まで、企業のリブランディングプロジェクト、新製品のコンセプト開発、ブランド浸透戦略立案などの幅広い業種業態でのブランディング支援を実施。