コーポレートブランディングとは?手法や事例、効果を解説

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社長交代や周年、国際化など、「コーポレートブランディングに取り組むタイミングだ」と感じている企業は多いのではないでしょうか。

コーポレートブランディングとは、企業ブランドの構築を通して、企業の価値を高めること。

自社の魅力的なイメージを作り、そのイメージをユーザーが持ち続けるように、施策を考えます。

例えばヤンマーは、コーポレートブランディングによってシンボルマークなどを変更しました。

コーポレートブランディングは新たな企業イメージを打ち出し、自社の魅力を消費者にアピールすることが可能です。

とはいえ、具体的にどのようなことに取り組めば良いのかは、なかなかわかりにくいものです。

そこで今回は、コーポレートブランディングの効果や事例、流れなどを詳しく解説します。

今回の記事を参考に、自社でもコーポレートブランディングへの取り組みを検討してみてください。

コーポレートブランディングとは?目的や効果を解説

「コーポレート ブランディング」写真1
最初に、コーポレートブランディングについて、

  • 概要
  • 目的
  • 効果

の観点から解説します。

コーポレートブランディングとは、企業ブランドの構築と企業価値の向上

コーポレートブランディングとは、企業ブランドの構築によって、企業そのものの価値を高めることです。

よく勘違いされますが、自社商品やサービスをPRすることではありません。
企業の無形資産として、新たに「ブランド」を育てます。

ブランドとは、「自社ならではの魅力的なイメージ」のこと。
ユーザーが瞬間的に思い浮かべる「魅力的なオリジナルイメージ」「他社と異なる点」などが当てはまります。

また「企業の社会目的」「社会目的に向かう一貫した姿勢」なども該当。

つまり、営業利益などではなく、顧客や社会を重要視した姿勢を指します。

ユーザーの持つブランドイメージは常に変化するため、コントロールするのが難しいです。
ブランディングによって日々イメージを更新することが必要。

その結果、企業価値も向上し続けるのです。

コーポレートブランディングは、特に企業イメージを良くし続ける取り組みを指します。

コーポレートブランディングの目的

コーポレートブランディングの目的は、主に以下の5つです。

  • 他社との差別化
  • 価格競争からの脱却
  • ファンの増加
  • 発言力の強化
  • 優秀な人材の採用

特に重要なのが「他社との差別化・価格競争からの脱却」。

ブランディングに取り組んでいると、ユーザーは同じ商品でも企業イメージが良い方を選ぶ傾向があります。

そうなると高値でも購入されやすく、競合他社を気にすることが少なくなるのです。

成功までの道のりは長いですが、良いユーザーや社員に出会う可能性が高まります。

コーポレートブランディングの効果

コーポレートブランディングは、以下のような効果が期待できます。

【商品・サービスの売上アップ】
商品やサービスイメージが固定されると、安心感も生まれます。
また環境問題や復興支援など、企業姿勢を評価するユーザーも。
コーポレートブランディングを通して発信することで、商品が選ばれやすくなります。

【資金調達のしやすさ】
コーポレートブランディングは、株主や銀行などからのイメージアップが期待できます。
企業の将来性に信ぴょう性も生まれるため、支持されやすいです。

【社員のモチベーション・業績アップ】
従業員が誇りを持って取り組める目的・目標を設定することで、社員のモチベーションを高めることも可能。
自社に良い印象を抱く方が、仕事の成果も出やすいです。

コーポレートブランディングに取り組むタイミング

「コーポレート ブランディング」写真2コーポレートブランディングに取り組むには、ベストなタイミングがあります。

1.社長交代

社長が交代するときは、新たな方向性を提示することが多いです。
しっかりと新たな方向性を打ち出すことで、社内の意識も統一されるでしょう。

2.周年

企業が周年を迎えるときも、コーポレートブランディングに適しています。

「過去のご愛顧への感謝」「今後の宣言」が必要なため、新たな方向性を社外に宣言しましょう。

3.企業合併

2つの企業が合併する場合、各組織の文化や考え方を統合することが欠かせません。
また社名変更にともなった、新ロゴの設定なども求められます。

4.事業再生

事業再生にあたってコーポレートブランディングに取り組む理由は、「社内の士気を高めるため」。

リストラなどを経て、一部従業員の士気が下がることもあるためです。

5.採用強化

さらに優秀な人材を採用したい、そもそも採用活動が難航しているときにも、コーポレートブランディングは効果的です。

6.国際化

グローバル展開を検討したとき、立ちはだかるのが「社名や企業ロゴに対する商標の問題」です。

問題を乗り越える方法として、ロゴなどビジュアルアイデンティティを変更することもあります。

コーポレートブランディングの事例

「コーポレート ブランディング」写真3続いては、コーポレートブランディングの成功事例として、

  • 三菱マテリアル株式会社
  • MOLDINO
  • ヤンマー

の3つを紹介します。

事例1.三菱マテリアル株式会社(mmc)

三菱マテリアル株式会社は、企業全体のリブランディングに取り組んでいます。

まず取り組んだのは、ユーザー調査。
新たにミッション・ビジョン、ブランドコンセプト、ブランドメッセージを決定しました。

そしてブランドメッセージなどを浸透させるために、インナーブランディングとアウターブランディングに着手します。

特にアウターブランディングにおいて、以下のツールを制作しました。

  • ブランドロゴ作成
  • お披露目会となる展示会デザイン
  • Webリニューアル

中でも情報誌「YOUR GLOBAL CRAFTSMAN STUDIO」は、雑誌風のデザインの冊子で「航空機産業と難削加工」など、専門的な情報をわかりやすく伝えています。

詳しくは事例「リブランディングプロジェクト(加工事業カンパニー)」をご一読ください。

事例2.MOLDINO

MOLDINOは、コーポレートブランディングの一貫として新しいロゴの作成やメッセージの開発に取り組みました。

コーポレートブランディングに取り組んだ背景は、「三菱マテリアル社との差別化」。

三菱マテリアル社への参画によって社名変更などを控えており、競合他社や三菱マテリアルとは異なる、新たな価値を提供する必要がありました。

新たな価値を定義し、社内・社外に浸透させるために取り組んだことは、主に以下の2つです。

  • アンケート調査:ユーザーの工具選定基準、各社企業イメージ、各社に対する満足度など
  • 心像イメージ法:顧客と社員に写真を通したブランドイメージを調査

その中で「何でも相談に乗ってくれる」などポジティブな声が多かったものの、「価格や供給などで競合に劣る」ことも明らかになっています。

上記の不安などをカスタマージャーニーマップで可視化。
あらためてビジョン・バリューを定義しました。

詳しくは「株式会社 MOLDINO様/リブランディングプロジェクト」をご覧ください。

事例3.ヤンマー

ヤンマーは2014年、創業100年にあたってコーポレートブランディングに取り組みました。

取り組んだのは「デザイン面からのブランディング」。

もともと日本・アジア圏の「農機具」と欧米圏の「高級船舶のエンジン」など、エリアによって異なる企業イメージがありました。

そこで世界的に共通イメージを作り出すために、佐藤可士和氏にブランディングを依頼したのです。

佐藤氏が取り組んだのは、以下の3つ。

  • シンボルマークの作成
  • 農機具など新商品の開発
  • 農作業ウェアのデザイン

ブランドコンセプトとしてシンボルマークを設計し、ブランドイメージをデザイン面から統一しています。

シンボルマークや農作業ウェアなどは、「YANMAR PREMIUM BRAND PROJECT」から閲覧できます。

参照:fullthrottle「次の100年を見越したブランディング戦略(ヤンマープレミアムブランドプロジェクト)」

コーポレートブランディングにおいて考えるべき項目

「コーポレート ブランディング」写真4続いては、コーポレートブランディングへの取り組みで必要な項目として、

  • 企業の経営・運営方針
  • ペルソナ
  • カスタマージャーニーマップ

の3つを解説します。

1.企業の経営・運営方針

コーポレートブランディングにおいて、企業の経営・運営方針を再度固めることが必要です。

その理由は「企業の見え方に関わる部分だから」。
企業活動の根幹であり、最大の課題です。

このような会社のあるべき姿を明確にしないと、社員もどこを目指せば良いのかわかりません。

そして企業の経営・運営方針のカギとなるのが「ミッション」「ビジョン」「バリュー」。
次で1つずつ解説します。

ミッション

ミッションとは、企業としての存在意義や使命です。

主に「自社の信頼されている部分」「経験が高い部分」などを考えます。

ミッションを考えることで、自分たちは何者なのか?を把握できます。

ビジョン

ビジョンとは、将来のあるべき姿のこと。

先ほどのミッション実現のために5年後・10年後に必要なこと、ビジョンを明確かつ魅力的にするために必要なことを考えます。

ミッションを達成するために、どういう姿であるべきか、方向性を示します。

バリュー

バリューとは、自社の強みや価値観です。

自社の独自性を言語化するために、「提供価値」「顧客のニーズ」などを考えます。

また「他社の提供価値」もあわせて考えることで、差別化のポイントも明らかになるでしょう。

自社イメージを知るにはリサーチが有効

先ほど紹介したミッション・ビジョン・バリューは、お客様目線に立って考えるのがおすすめです。

特に「アンケート調査」と「インタビュー調査」が効果的です。

自社のあるべき姿など、「自分たちがもっとも理解している」と感じるかもしれません。

しかし冒頭でもお伝えしたように、ブランドイメージを抱くのはお客様。

そしてイメージは常に変化するからこそ、ユーザー自身に問いかけるのがもっとも効果的です。

おすすめのリサーチ法は「心像イメージ法(投影法)」。
複数の画像から自社イメージに近いものを選んでもらい、理由や背景を深堀します。

言語化が難しいブランドイメージも、画像の活用で潜在的なイメージを引き出すことが可能です。

2.ペルソナ

ペルソナは自社のお客様像です。

先ほどのインタビュー調査などから「共通ゴール」「行動パターン」などを導き出し、1人の人物像としてモデル化したものです。

ペルソナを決めることには、以下のメリットがあります。

  • プロジェクトに関与するスタッフが複数でも、共通イメージを持てる
  • ユーザー視点のニーズなどがより的確に把握できる
  • 方向性が定まりやすく、時間・コストを最小限におさえられる

ユーザー視点の精度が高まるうえに、ブランディング過程において手戻りが発生しません。

最小限のコストと時間でブランディングを進めることが可能です。

ペルソナ制作の流れ

ペルソナを制作するステップは、以下の通りです。

1.リサーチからユーザーのニーズを知る
感情や行動が変化した理由をしっかりとおさえることが必要です。
制作側の思い込みやイメージでペルソナを制作することを避けるためにも、ユーザーに対する違和感などはしっかりと質問しましょう。

2.情報を仕分ける
リサーチで得た情報をニーズごとに仕分けます。
ニーズは特徴的な発言などからわかることが多いです。

3.ペルソナを物語風に仕上げる
仕分けた情報を箇条書きなどでまとめて、ストーリー風に仕上げます。
特に印象的な発言などを残すと、リアルなペルソナが完成します。

ペルソナで設定しておきたい情報

ペルソナがある程度完成したら、下記のような詳細な情報も考えてみましょう。

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 年収
  • 家族構成
  • 出身地

このような基本情報も設定すると、実在の人物に近くなります。

3.カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーの認知から購入までのプロセスを可視化したものです。

時系列かつユーザー視点で並べることで、行動を客観的に理解することが可能です。

カスタマージャーニーマップ制作のメリットは、以下の2つ。

  • ユーザー視点の施策に優先順位をつけて取り組める
  • 各タッチポイントに加えて、体験全体を改善するアイディアが浮かびやすい

制作を通して、ユーザーの商品・サービスに対する不満や課題を明確にすることが可能に。

特にコーポレートブランディングにおいて、これまでの改善点などを明確にした上で、新たな方向性を考えるときに役立ちます。

ここまで紹介した5つの項目を考えた後は、実際のブランディング施策に取りかかりましょう。

その場合ブランディングは、社内向けの「インナーブランディング」と社外向けの「アウターブランディング」にわけられます。
次で1つずつ解説します。

コーポレートブランディングの手法:インナーブランディング

「コーポレート ブランディング」写真5最初に社内向けの取り組みとして、インナーブランディングの概要、効果、ツール例を紹介します。

インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を社内に浸透させる取り組みです。

そもそもコーポレートブランディングの最終目的は「ブランドの価値を最大化すること」。

ブランドエンゲージメントを高めるためにも、以下2つを目標に、ミッション・ビジョン・バリューを伝えるツールを制作します。

  • ブランドの価値・浸透促進
  • 社内コミュニケーションの活性化

インナーブランディングの効果

インナーブランディングに取り組むと、社内で以下の効果が期待できます。

  • 社員個人のスキルアップ、生産性の向上
  • 商品・サービスのクオリティアップ
  • 顧客満足度の向上

まずミッションやビジョン、バリューが浸透することで、社員の気持ちに変化が生まれます。

そして向かうべき方向も統一されると、モチベーションが高まることも。

仕事に前向きな姿勢が生まれることで、生産性アップなどの効果につながります。

インナーブランディングのツール例

インナーブランディングは、例えば以下のようなツールを制作します。

【ブランドの価値・浸透促進】

  • ブランドブック
  • 社史・記念館
  • 社内ビジョンムービー
  • 社内向けノベルティ

【社内コミュニケーションの活性化】

  • 社内報・イントラ
  • 社内イベント
  • 社歌
  • セレモニー・決起集会

必ずすべて制作すべきわけではありません。
目的や自社に必要なツールを見きわめて、選んでください。

インナーブランディングの注意点

インナーブランディングに取り組むときは、以下に注意しましょう。

  • ブランディングの目的も社員に共有する
  • ブランド価値などを正しく伝える
  • ブランディングのメリットも伝え、モチベーションを高める

「何のためにブランディングをするのか」など理由まで伝えないと、人は納得できません。

行動をうながすにはメリットや効果を伝えながら、自分事に捉えてもらうことが必要です。

コーポレートブランディングの手法:アウターブランディング

「コーポレート ブランディング」写真6続いては、社外向けのアウターブランディングについて、概要、効果、ツール例、注意点を紹介します。

アウターブランディングとは

アウターブランディングとは、社外に向けて自社の商品やサービス、企業理念などを浸透させる取り組みです。

インナーブランディングと似ていますが、制作ツールが少し変わります。

アウターブランディングの効果

アウターブランディングには、以下の効果が期待できます。

  • ユーザーに自社のメッセージが伝わりやすくなる
  • 顧客満足度が向上する

アウターブランディングのツール例

アウターブランディングのツールには、例えば以下のようなものがあります。

【ブランドの価値・浸透促進】

  • ブランドムービー
  • ブランドブック
  • 復興支援・寄付事業
  • 特設Web
  • 周年広告
  • 企業サイト
  • ノベルティ
  • 採用サイト
  • プレスリリース

【コミュニケーションの活性化】

  • 限定プロダクト
  • SNS活用
  • 展示会
  • CM
  • PRイベント
  • 販促キャンペーン

上記も自社に最適なツールを選び、制作してみてください。

アウターブランディングの注意点

アウターブランディングでは、以下の点に注意しながら取り組みましょう。

  • デザインマネジメントにも取り組む
  • 効果測定をしながら改善をくり返す

特に「デザインマネジメント」は重要。

例えば、トンマナやキーメッセージなど、企業らしさを伝えるためにも、一貫したデザインの基準を作ることが必要です。

またブランディングツールを制作した後は、効果を測定しましょう。
結果によって新たなツールを制作するなど、改善をくり返すことも必要です。

上記をおさえておくことで、一貫した企業メッセージを発信することが可能です。

コーポレートブランディングを通して自社メッセージをユーザーに届ける

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今回は、コーポレートブランディングの概要や効果、流れを解説しました。

ここまでをまとめると、コーポレートブランディングとは企業ブランドの構築によって、企業そのものの価値を高めることです。

主に社長交代や周年、採用強化のタイミングなどで取り組まれることが多いです。

コーポレートブランディングには、以下3つの効果があります。

  • 商品・サービスの売上アップ
  • 資金調達のしやすさ
  • 社員のモチベーション・業績アップ

またコーポレートブランディングで考えるべき項目として、以下をお伝えしました。

  • 企業の経営・運営方針
  • ペルソナ
  • カスタマージャーニーマップ

上記を考えた後、インナーブランディングとアウターブランディングとして、ツールの制作に取り組むことになるでしょう。

今回の記事を参考にしながら、コーポレートブランディングに取り組むことを検討してみてください。

またブランディングについて相談したい方は「お問い合わせ」からお気軽にご連絡ください。

Topics: マーケティング


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