ブランディングに欠かせない!”なぜ”で人を動かす「ゴールデンサークル理論」

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start with your why is written in a blue sticker near a black alarm clock

こんな人におすすめ

  • 製品・サービスにおいて競合他社との差別化に課題を感じている経営者
  • 製品・サービスの魅力が伝えきれていないマーケティング担当者

読んだ後に身につくこと

  • 自社製品・サービス独自の魅力を伝えるPR方法
  • 人の心を動かすようなストーリーの伝え方
  • 競合と差別化する製品・サービスの伝え方

ブランディングで必要な「Why(なぜ)」

ミッション・ビジョン・バリューとは?事例から作り方までご紹介」で解説した「パーパス・ブランディング」をはじめ、いまブランディングでは「Why(なぜ)」をいかにして語るかに注目が集まっています。そこで支持されているのが、「ゴールデン・サークル理論」。マーケティングコンサルタントであるサイモン・シネック(Simon Sinek)氏が、2009年に「TEDトーク」でプレゼンした「優れたリーダーはどうやって行動を促すのか」の中で説明した理論です。

今「Why(なぜ)」が必要な理由

昨今、多くの企業が「選ばれ続ける理由」探しに苦しんでいます。成熟した市場においては商品・サービスの機能や品質面で差別することは容易ではなく、商品・サービスを購入した結果として得られる「体験・コト」に消費の中心が移っています。消費者から「他と違う価値がある」として選び続けてもらえるよう、「何のために、どうして」それを選ぶのか納得してもらうため、志や大義を明確にすることが求められているのです。
特に、日本の企業は、自社商品の技術力や品質に自信があることから商品自体の魅力を伝えることに夢中になってしまい、なぜその商品を作ろうと思ったかや、それによって世の中のどのような課題を解決したいと思っているかを語ることが少ないと言われています。商品スペックが重視されていた昔と比べ、SNSや口コミが消費者の購買行動に大きく影響する現代において、感情に訴える印象が少なく相手の直感的な共感を生みにくいということはデメリットになってしまうのです。

このように、感情に訴える印象が少なく、相手の直感的な共感を生みにくいことから、購入されない、手に取ってもらえない、結果的に事業成長の機会を逃してしまっているという状態を「キャズム(深い溝)」といいます。

キャズムを超えるために有効な「ゴールデンサークル理論」

「キャズム」について深掘りする前に押さえておきたい、有名なマーケティング理論である「イノベーター理論」。私たちは、ここでも同じく「Why」を求める必要があると考えます。

イノベーター理論とは、購入・利用する消費者を新しい商品・サービスが市場に普及するタイミングに応じて5つのタイプに分類する考え方を指します。このとき、一番最初に商品やサービスに興味を持つ層に受け入れられなければ、自社の商品やサービスを社会に浸透させることが難しいと言えるでしょう。よってここからも、商品やサービスを市場に普及させるためには、人々の「直感」に語りかけ、人を動かす「Why」が重要だということが分かります。

イノベーター理論とキャズム理論

そこで注目したいのは、アーリアダプターまでの16%の顧客と、それ以外の84%の顧客では、購買の動機が異なることです。このアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にある壁を「キャズム(深い溝)」と呼び、より多くの顧客に購入してもらうためには、まず「イノベーター」と「アーリーアダプター」を獲得しきらなければならないのです。イノベーターとアーリーアダプターを獲得するためには、「Why」を強く訴求し、その製品やサービスの持つ信念や価値観に共感し、ファンになってもらう必要があるのです。では「キャズム」から抜け出すには、具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。

「なぜ」を伝えてファンになってもらう、ゴールデンサークル理論

ここで登場するのが「ゴールデン・サークル理論」です。繰り返しになりますが、ブランディングの最初に当たる「共有・認知」のステップで「Why」を伝えることが大切です。この理論は同心円になっており、構成要素は外側から What(何を)、How(どうやって)、Why(なぜ)という 3 つの要素が順番にあります。

ここで登場するのが「ゴールデン・サークル理論」です。繰り返しになりますが、ブランディングの最初に当たる「共有・認知」のステップで「Why」を伝えることが大切です。この理論は同心円になっており、構成要素は外側から What(何を)、How(どうやって)、Why(なぜ)という 3 つの要素が順番にあります。
出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)

ゴールデンサークル理論は、内側から外側に向かってWhy→How→Whatの順番で物事を説明する時の考え方です。

人間の脳は、外側に論理的・分析的思考を担当する「大脳新皮質」と、内側に感情と行動を担当する「大脳辺縁系」の2構造になっているため、ゴールデンサークル理論に当てはめて考えると、最初に「Why」 から伝えることにより、大脳辺縁系が司る人間の感性や感情に訴えることができ、行動を促すことができることがわかります。つまり数字や理論などの説明も大切ですが、人の心を動かすのは感情となるため、「Why」の部分から話をすることで、直感的に共感を呼び起こし、その後の内容が好印象になります。「何を、どうやって、それはなぜなのか」の順番に説明する人が多いのですが、それではなかなか人は動きません。「なぜやるのか、どうやってやるのか、そして何をやるのか」の順番に説明するほうが人は動くということです。

この理論が重要になった背景は、「Why(なぜ)」が必要になった理由の他に、消費者やサービス利用者がSDGsや複雑な社会課題によって、「モノを買う人、サービスを利用する人」から「社会を良くする人」へと自らを変化させ、企業やブランド の存在意義や志をより重視するようになったことも挙げられます。

ブランディングにおける、ゴールデンサークル理論の活用法

このゴールデンサークル理論を活用することで、「何を伝えるべきなのか」という本質を整理することにつながります。ここでは、DCDが実際に行っている「Why」から始まるブランドストーリー構築に向けた「Why」「How」「What」の各段階における考え方について解説します。

「Why」:ミッション・ビジョン(ブランディング)
ゴールデンサークル理論の中心に位置する「Why(なぜ)」の部分には、自社のミッションやビジョンを当てはめます。ミッションとは企業が果たすべき使命や存在意義のことであり、ビジョンとは企業が実現したいと考えている未来のことを指します。(詳しくはこちら)人はこの「Why」で心を動かされるため、ブランドを伝えていくためには、企業のミッション・ビジョンを中心におく必要があるのです。

「How」:マーケティング
商品やサービスの価値を顧客にどうやって伝えるのかを考えるのが「How」の部分であり、マーケティングの考え方に該当します。顧客が抱える課題と自社の商品・サービスを利用することによる解決策について語り、相手にどのようなベネフィットがあるのか明確に伝えることが大切です。先程の企業のミッション・ビジョンのWhyの部分と紐づく内容であることが大切です。

「What」:商品・サービス開発
最後の「What(何を)」では、自社の商品・サービスやブランドを具体的に語り、顧客に対して促したい行動を伝えます。顧客が、商品やサービスを購入した後、その人の未来がどう変わるか、そのために「何を」すればよいか、具体的なアクションをイメージしやすい伝え方を心がけましょう。

ゴールデンサークル理論を活用したApple社の事例

昨今に至るまで、iPhone、iPadで不動の地位を築いてきた「Apple社」は、この理論に沿った理念の打ち出し方や行動をしています。実際に、ゴールデンサークル理論を活用したApple社の製品における伝え方を見てみましょう。

「我々のすることは世界を変えると信じている。そして違う考えに価値があると信じている」(WHY)

「すべての製品を美しくシンプルに使いやすい製品にする」(HOW)

「素晴らしいスペックの製品が誕生した」(WHAT)

製品の有能さや機能についてこんこんと説明するのではなく、「Why」をはじめに伝えるからこそ、Apple社の信念や目的に共感する人たちに届き、熱狂的なファンの獲得につながることがわかります。それにより「携帯といえばiPhone」というような不動の地位も確立したのです。

まとめ

今回は、ゴールデンサークル理論について、弊社の考え方を交えながらご紹介しました。人は「なぜ」にあたる信念や価値観に基づいて行動しています。ですので、企業のブランディングを成功させるためには、ゴールデンサークル理論の考え方を活用しながら、共感を呼ぶような唯一無二のブランドストーリーを発信することが大切です。

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【参考文献】
『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)

ディレクション 村山貴彦 
株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン Webプランナー / ディレクター。ブランドをコアとしたコミュニケーションの企画とディレクションを行う。大手上場企業から中小企業までのブランディングプロジェクト、Webサイト企画・開発ディレクション支援、SEO支援などのブランディングコミュニケーション支援を実施。
執筆 小林花
株式会社大伸社コミュニケーションデザイン 2022年度新卒入社で、現在プランニングチームに所属。BtoBを中心とした様々な案件に携わる中で、企業価値向上におけるブランディングの奥深さを感じるように。このブログ執筆を通して、私自身も理解を深めながら、ブランディングの重要性をお伝えできたらと思います。
監修者情報 金子大貴

株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン チーフ ブランディングディレクター コピーライターとして、広告・宣伝のクリエイティブ開発の経験を経て、ブランディングに特化したプランニング・コンサルティングを担う現職へ。大手上場企業から中小企業まで、企業のリブランディングプロジェクト、新製品のコンセプト開発、ブランド浸透戦略立案などの幅広い業種業態でのブランディング支援を実施。著書に「手にとるように分かるブランディング入門」(2022年/かんき出版)。

Topics: マーケティング, ブランディング


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