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MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?事例から作り方までご紹介

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?事例から作り方までご紹介

MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューの3要素で企業の志を言語化した枠組みです。言葉は知っていても、企業理念やパーパスとの関係や、形骸化させない進め方には迷いが生じます。本記事では3要素の役割の違いから、策定の手順、社内への浸透施策、有名企業の事例までを解説します。 

この記事の要約 

  • MVVはミッション【What】、ビジョン【Where】、バリュー【How】の3要素で構成され、ビジョンを起点に整理すると一貫性が生まれる 
  • 企業理念はMVVを包む上位概念、パーパスは存在理由【Why】を示す要素で、P-MVVやPVVなど理念体系の型は企業ごとに異なる 
  • MVVは社内外への発信、製品・サービスのブランディング、経営と人事の意思決定を支える基準として機能する 
  • 優れたMVVの条件は、その会社らしさがあること、具体的にイメージできること、心が動くことの3点です 
  • MVVの浸透は発信量ではなく、日常業務と人事評価に組み込めているかで決まる 
目次

    MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは? 

    MVVとは、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)の頭文字を並べた言葉です。コーポレートブランドを築くうえで軸になるブランドコアの要素にあたり、そのブランドに持ってほしい独自のイメージを定義づける目的を担います。3つはそれぞれ問いかける内容が異なり、役割を分けて理解すると混同を避けられます。

    要素 役割
    ミッション【What】 ビジョンを叶えるために何を果たすのかを示す存在意義
    ビジョン【Where】 ブランドとしてどんな未来を作っていきたいかを描いた到達点
    バリュー【How】 ミッションとビジョンの実現に向けて大切にする価値観や行動指針
    3要素のつながり 並び順は企業によって異なり、ビジョンを起点に整理すると一貫する

    ミッションは存在意義を表す 

    ミッションは、ビジョンを叶えるために自社が何を果たすのかを示す要素です。問いかけの形にすると「What」にあたり、社会のなかで自社が担う役割や、事業を通じて解決する課題を言葉にします。売上や利益といった数値目標とは性質が異なり、達成して終わるものでもありません。事業内容が変わっても保たれる普遍性を持たせると、組織の判断軸として長く機能します。日々の業務で迷いが生じたとき、この会社は何のために存在するのかという問いに立ち返る拠りどころになるでしょう。 

    ビジョンは目指す未来像を描く 

    ビジョンは、ブランドとしてどんな未来を作っていきたいかを描いた要素で、問いに置き換えると「Where」を扱います。ミッションが変わらない使命を示すのに対し、ビジョンには到達点としての性格があります。「2030年に〇〇分野で国内シェア1位」のように期限と状態を明示する企業もあれば、目指す社会像を抽象度の高い言葉で掲げる企業もあり、表現の幅は広いといえます。掲げた未来に社員が魅力を感じられるかどうかが、その後の求心力を左右します。 

    【関連記事】ビジョン策定の進め方は?組織を成長させる手順や成功事例を詳しく解説 | 大伸社コミュニケーションデザイン 

    バリューは判断基準を定める 

    バリューは、ミッションとビジョンを実現するために企業が大切にする価値観や行動指針を指し、「How」の問いに答える要素です。抽象的な理想を日々の行動へ翻訳する役目を持つため、3つのなかで最も現場に近い位置にあります。「顧客の期待を超える」「失敗を歓迎する」といった言葉を複数のキーワードとして掲げるケースが一般的でしょう。採用基準や人事評価、表彰制度に組み込みやすい点も、バリューならではの性質です。 

    3要素はビジョンを起点につながる 

    3つの要素は独立したスローガンではなく、互いに連なる構造を持ちます。ただし企業や組織によって並び順の考え方が異なることも多々あり、混乱を招く場面もあるかもしれません。

    大伸社コミュニケーションデザインが企業ブランディングを手掛ける際は、「その企業がどんな世の中を作っていきたいのか(ビジョン)」から出発し、「そのためにはどんな姿になっていなければならないか(ミッション)」、さらに「そこで働く人たちが大切にしなければならない信念は何か(バリュー)」という順番を意識して作成しています。この順序でつなぐと、未来像から逆算して日々の行動までが一本の線で結ばれ、社員が自分の仕事と理念の関係を捉えやすくなります。 

    MVVと企業理念やパーパスの違い 

    MVVと企業理念やパーパスの違い

    MVVと混同されやすい言葉に、企業理念、経営理念、行動指針、パーパスがあります。いずれも企業の価値観を扱う概念ですが、指し示す範囲と問いかけの種類が異なります。用語の関係を先に整理しておくと、社内での議論のずれを防げます。 

    用語 MVVとの関係
    企業理念 創業以来変わらない根本の考え方で、MVV全体を包み込む上位概念
    経営理念 企業理念を経営の方針へ具体化した言葉で、時代に合わせて更新される
    行動指針 バリューをさらに細かい行動レベルへ分解した現場向けの基準
    パーパス 「なぜ存在するのか」という存在理由【Why】を社会との関係で示す
    理念体系の型 P-MVVやPVVなど、要素の組み合わせは企業によって異なる

    企業理念はMVVを包み込む 

    企業理念は、創業以来変わらない根本の考え方を指し、MVVを含む上位概念にあたります。「わが社は何を信じ、何を大切にする会社なのか」という問いへの答えであり、経営者が代わっても引き継がれる性質を持ちます。

    企業理念という言葉でミッションに相当する内容を掲げている企業もあれば、企業理念の下にMVVを配置して整理している企業もあり、運用は一様ではありません。自社の既存の理念体系を確認したうえで、MVVをどの階層に置くのかを決める作業が出発点になります。 

    経営理念は方針として具体化する 

    経営理念は、企業理念を実際の経営の方針へと落とし込んだ言葉です。企業理念が普遍性を持つのに対し、経営理念には事業環境や経営者の交代に応じて見直される柔軟さがあります。

    「顧客第一」「品質本位」といった経営姿勢を示す表現が代表的でしょう。MVVとの関係でいえば、ミッションやバリューと重なる部分が生まれやすく、既存の経営理念がある企業では、MVV策定時に両者の役割分担を確認する工程が必要になります。 

    行動指針はバリューを分解する 

    行動指針は、バリューをさらに細かい行動レベルまで分解した基準です。バリューが「顧客の期待を超える」という価値観を示すなら、行動指針では「提案前に顧客の課題を3つ以上挙げる」といった具体的な所作へ翻訳します。

    抽象度が下がるほど現場での再現性は高まりますが、その分だけ事業や職種ごとの調整も求められます。クレドやウェイという名称で運用する企業も多く、呼び方の違いにかかわらず、日々の判断を支える役割は共通しています。 

    パーパスは存在理由を示す 

    パーパスの役割は、「そのブランドがなぜ存在するのか」という存在理由【Why】に該当します。ミッションの【What】、ビジョンの【Where】、バリューの【How】に対し、より根源的な問いを扱う位置づけです。パーパスが問われるようになった背景には、社会環境や自然環境が大きく変化し、自社の利益だけを追求する姿勢が、場合によっては批判を受けるようになった事情があります。

    さらに、自社の発展を自力だけで実現するのは難しく、多くのステークホルダーと共創しながら共存共栄を図るほうが現実的な道筋になってきた点も要因の一つです。例えば、2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対する西側諸国企業の姿勢に見られるように、利潤の追求だけでなく社会的な要請への対応が結束力を持って求められるようになっています。社会のなかでの存在理由を語れるかどうかが、企業の評価を左右する時代に入ったといえます。 

    【関連記事】パーパスブランディングとは?企業の存在意義を示すブランディング手法 | 大伸社コミュニケーションデザイン 

    企業パーパスは社会的責任の変化と市場環境の変化を考慮していく必要がある

    出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著) 

    理念体系の型は企業によって異なる 

    パーパスを含む理念体系にも、決まったテンプレートがあるわけではありません。パーパスを含んだ4つの要素すべてを定義するパーパス・ミッション・ビジョン・バリュー(P-MVV)の形を採る企業もあれば、パーパスにミッションの要素を含めて、パーパス・ビジョン・バリュー(PVV)のような3つの要素で構成するパターンもあり、組み合わせは様々です。自社にとって必要な要素を見極め、重複する言葉を無理に並べない判断も求められます。要素の数をそろえるより、社員が迷わず使える構成にするほうが、運用段階での実効性は高まるでしょう 

    MVVの必要性

    MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の必要性

    MVVが必要とされるのは、企業の志と提供価値を社内外へ一貫して示す軸になるからです。その重要性に早くから言及していたのが、日本でも人気の高い経営学者であるピーター・F・ドラッカー氏でした。

    遡ること1965年の著書『現代の経営』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)にミッションやビジョンといった言葉こそ出てきませんが、「成功を収めている企業は、『われわれの事業は何か』を問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによって成功がもたらされている」と、MVVにつながる指摘を残しています。

    さらに2002年の著書『ネクスト・ソサエティ』においても、「ネクスト・ソサエティにおける企業の最大の課題は、社会的な正統性の確立、すなわち価値、使命、ビジョンの確立である」と主張しています。半世紀以上前の問いかけは、理念を言語化する現在の議論にもそのまま当てはまります。ここではそんなMVVの必要性を3つの観点から解説します。 

    企業の志と提供価値を社内外に示せる 

    MVVを新たに定め、組織に浸透させると、社内・社外のどんな人々が見ても、その企業がどんな志を持ち、どんな価値を提供するのかを示せるようになります。社員のモチベーションが高まり、採用においても優秀な人材を集めやすくなるという利点も生まれます。つまりMVVによって、事業活動から採用広報まで幅広い取り組みに一貫性と軸が備わるのです。こうしたブランディング活動を積み重ねた先に、独自のブランドとしての成長があります。 

    製品やサービスのブランディングにも効く 

    MVVはコーポレートブランディングだけでなく、製品(商品)やサービスのブランディングにも効果を発揮します。顧客がその製品について「どんな企業が、なぜ提供するのか」を理解すると、企業との信頼構築や購買に関する判断へ良い影響を与えるためです。

    BtoBや中小企業においては、製品・サービスとコーポレートブランドが、BtoCに比べてより密接な関係にあります。そのため製品ブランディングでは、具体的なブランドベネフィット(主に機能的価値や情緒的価値)の設計を優先しつつも、企業としての志をセットで設計したいところです。両輪で組み立てることで、単なるベネフィットの違いにとどまらない、独自のブランドとして確立できる可能性が期待できます。 

    経営と人事の判断基準になる 

    MVVは、経営者を含むマネジメント層や、人事評価を定める人事担当者にとって、的確に、そして迅速に選択できる基準として機能します。判断の拠りどころが言語化されていない組織では、投資先の優先順位づけや評価の場面で結論が人によって揺れがちです。理念が共有されていれば、議論の起点をそろえたうえで意思決定に進めます。こうした背景から、MVVの策定が活発化しているのです。 

    優れたMVVの見分け方

    MVVを考えるにあたって最初の課題として多く見受けられるのが、たとえば「社会に貢献する」「お客様第一」「社員を幸せにする」という言葉に集約されてしまうパターンです。なぜなら、これらはある意味この世のすべての企業に当てはまる内容になっているからです。

    そこで優れたMVVとなりうるポイントは、以下のように考えられます。

    • その会社らしさがあるか
    • 具体的にイメージできるか
    • 心が動くか(ワクワクするか)

    日本のトップブランドであるソニーは、家電製品を軸に多角化事業を行う中で、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」と掲げていました。顧客に対して「感動で満たす」という多様なエンターテインメントを提供してきた企業だからこそできる、社会に対する貢献の姿勢や存在意義だと言えます。

    MVVを策定するタイミング 

     MVVを策定するタイミング

    MVVは創業期に限らず、組織の前提が変わる節目で策定や再定義に踏み切るケースが多く見られます。代表的な4つの局面を挙げます。 

    局面 踏み切る理由
    創業期 初期メンバーの判断を揃える軸が必要になる
    事業転換・M&A 既存の言葉が新しい事業や文化に合わなくなる
    組織の拡大期 社員増で暗黙の共通認識が薄れる
    上場・社長交代 社外への説明責任と社内の再統合が同時に生じる

    創業期に組織の軸を定める時 

    創業期は、少人数のうちに価値観を言葉にできる貴重な時期です。事業の輪郭が固まりきっていない段階でも、創業者が成し遂げたいことは明確なケースが多く、その熱量をそのまま言語化できます。人数が増えてからの策定に比べ、合意形成にかかる時間も短く済むでしょう。 

    事業転換やM&Aで再定義する時 

    既存事業から軸足を移すときや、他社と統合するときは、MVVの再定義が現実的な選択肢になります。異なる文化を持つ組織が一つになる場面では、どちらかの言葉を押し付けるより、新しい旗印を共同でつくるほうが統合は進みやすいです。事業転換の際も、既存のミッションが新領域を説明できるかを点検しておくと、現場の混乱を防げます。 

    社員増で文化が薄れた時 

    社員数が増えて「言わなくても伝わる」状態が崩れてきたら、MVVを整える時期に入っています。創業メンバーの判断を近くで見て学ぶ仕組みは、組織の規模が一定を超えると機能しなくなります。中途入社が多数派になる前に言語化しておけば、後からの浸透コストを抑えられるでしょう。 

    上場や社長交代を機に見直す時 

    上場準備や社長交代の局面では、社外への説明責任と社内の再統合が同時に求められ、MVVの見直しが動き出しやすくなります。上場審査や投資家との対話では、事業計画の前提となる考え方を問われる場面が増えていきます。経営トップが代わるタイミングも、過去の言葉を引き継ぐか作り直すかを決める好機です。 

    MVVの作り方 

    MVVの作り方は、創業の想いを掘り起こし、社内の対話を通じて言葉へ落とし込む流れが基本です。順序を飛ばして表現だけを整えると、後から解釈のずれが生まれます。ここでは6つの手順に沿って進め方を整理しました。 

    手順 進めること
    手順1 創業の想いを掘り下げる 創業者の原体験や事業を始めた動機を洗い出す
    手順2 強みと現状を分析する 自社の資産と市場環境を整理して現在地を確かめる
    手順3 社員を巻き込み議論する 階層や部門を越えたメンバーで対話の場をつくる
    手順4 ミッション・ビジョン・バリューを決める ビジョンから順に議論し、3要素を言語化する
    手順5 短い言葉に絞り込む 議論で出た要素を一息で言える表現にまとめる
    手順6 社内外の反応を確かめる 社外や現場の受け止めを聞いて表現を調整する

    手順1 創業の想いを掘り下げる 

    MVVづくりの出発点は、創業者が事業を始めた動機にあります。どんな課題に憤りを覚えたのか、誰の役に立ちたかったのか、そうした原体験を関係者への取材で引き出していきます。インタビューの際には、例えば「初めて会う親戚の子ども(小学1年生)に『どんなおしごとをしているの?』と聞かれたら一言でどう答えるか」といった問いを投げかけることで、自身の仕事を抽象化し、存在意義のヒントを得やすくなります。

    創業から年数が経った企業では、当時を知る社員がすでに少ないケースもあるでしょう。社史や創業時の資料、初期の顧客との関係性をたどると、言語化されていなかった想いが輪郭を持ち始めます。ここで集めた素材が、後の議論で判断の拠りどころになります。 

    手順2 強みと現状を分析する 

    理想だけを語ったMVVは現場に届かないため、自社の現在地を客観的に把握する工程が必要です。提供価値、技術、顧客基盤、人材といった資産を棚卸しし、競合との違いがどこにあるのかを整理します。あわせて市場環境や顧客の変化も確認し、既存の強みがこの先も通用するかを検討しましょう。

    社内の認識と顧客からの評価がずれている場合は、顧客インタビューで事実を確かめると精度が上がります。その際、顧客が商品やサービスを機能・性能だけで選んでいるとは限らないため、「顧客が自身のどんな用事(ジョブ)を片づけるために自社の商品を『雇って』いるのか」というジョブ理論の視点で顧客の行動や目的を観察することが、真の強みを発見するカギになります。理想と現実の距離が見えた時点で、MVVが埋めるべき隔たりも明らかになっていきます。 

    手順3 社員を巻き込み議論する 

    MVVの議論は、経営層だけで完結させず、階層や部門を越えたメンバーで進めます。役員、中堅社員、若手、現場に近い職種と、立場の異なる人が同じ場に入ることで、言葉の受け取られ方の違いが見えてきます。

    全社員が参加する必要はありません。各部門から数名ずつ選んだプロジェクトチームを編成し、そこでの議論を定期的に全社へ共有する形が現実的でしょう。議論の過程を見せること自体が、策定後の浸透を助ける下準備になります。 

    手順4 ミッション・ビジョン・バリューを決める 

    3つの要素は、ビジョン、ミッション、バリューの順に議論すると、言葉どうしが自然につながります。最初に扱うビジョンは「どんな未来を作りたいのか」という問いであり、ブランドが描く夢、そして将来の自社と社会の理想像にあたります。経営理念に近い位置づけを持ち、未来への約束であると同時に、新しい変化を生み出し、自らを変革する原動力にもなるものです。 

    ここで掲げる水準は、高いほど世の中に刺激を与えられます。一方で、それをステートメントとして世に出す段階になると二の足を踏む企業が多く、議論が停滞しがちです。ビジョンを話し合う場で鍵になるのは「否定をしないこと」でしょう。現実の制約から一旦切り離し、本来どんな未来を実現できたら従業員が喜ぶのかを、子どものような視点で考える進め方が効果的です。 

    これまでの考えはどんなブランドになりたいかだが、これからはなぜ社会に存在し、どんな社会にしていきたいか?
    出典:『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)

    実践的な思考法としては、バックキャスティング思考が有効です。現在の延長線上で未来を描くのではなく、現在を度外視して「未来のあるべき姿」を起点に目標を考えます。この順序を取ることで、より魅力的なビジョンが生まれやすくなります。 

    バックキャスティング思考は、現在から未来を考えるのではなく、まずは、現在を度外視して、「未来のあるべき姿」「未来起点」で目標を考える方法です。
    出典:「バックキャスティング」とは, 視覚会議

    ビジョンの方向性が見えてくれば、この後のミッションとバリューの設定は比較的、難易度が下がります。ミッションでは「ビジョンを実現するために、果たす使命は何か」を話し合います。企業として何を果たさなければならないのか、どんな役割を担う必要があるのかを、設定したビジョンに照らして言葉にしていきましょう。 

    バリューは「ミッション・ビジョン実現のために私たちが大切にしたい価値観」を扱います。日々の具体的な行動で参考にする価値観をキーワードとして抽出し、策定していく流れです。複数のキーワードから構成されるケースも多くあります。 

    このように順を追って作成し、3要素それぞれのつながりを意識すると、全体に一貫性が出て社員の心に響く内容になります。ワークショップを終えてMVVのワークシートが埋まっていれば、企業としての「志」の定義は完了です。3つの要素を言語化して再整理する作業は、果たす使命や存在意義、目指す未来の明文化につながり、後々の中期経営計画の策定にも生かせます 

    手順5 短い言葉に絞り込む 

    議論で出た言葉は、そのままでは長く、記憶に残りません。伝えたい要素を削ぎ落とし、一息で言い切れる長さまで圧縮していきます。複数の案を作り、声に出して読み比べる方法が有効です。social媒体や名刺、採用サイトなど、実際に掲載される場面を想定して確認すると、使いにくい表現が早い段階で見つかります。言い換えの候補をいくつか残したうえで、次の手順で反応を確かめる流れにすると判断しやすくなるでしょう。 

    手順6 社内外の反応を確かめる 

    完成前の案を関係者に見せ、受け止め方を確認する工程で精度が高まります。社員には、その言葉を読んで自分の仕事と結びつくかを尋ねます。顧客や取引先には、その企業らしさが伝わるかを聞くとよいでしょう。ここで違和感が出た表現は、解釈のずれが起きるサインです。修正を加えたうえで正式に発表すれば、公表後の説明もスムーズに進みます。 

    MVVを浸透させる方法 

    浸透の成否は発信量ではなく、日常業務と評価に組み込めているかで決まります。前述の調査では、行動変化に有効な施策として「日常業務への落とし込み」が50.0%で首位となり、理解に有効な施策では「具体例・ストーリーの共有」が47.3%を占めました。 

    参考:https://www.daishinsha-cd.jp/blog/inner-branding-survey/ 

    施策 狙い
    経営者による継続発信 決定の背景をストーリーとして共有する
    人事評価への組み込み 建前ではなく判断基準として扱う
    表彰・称賛の仕組み 体現した行動を具体例として流通させる
    浸透度の定点調査 効果を測って打ち手を修正する

    経営者が自分の言葉で語る 

    浸透の起点は、経営者が自分の言葉で背景を語り続けることです。決まった文言を読み上げるのではなく、なぜその言葉を選んだのか、どんな判断に迷ったのかを具体例とともに話すと、聞き手の記憶に残ります。このとき、「何を、どうやって」よりも先に、「なぜこの取り組みをやるのか(Why)」の順番で説明するほうが、聞き手は腹落ちしやすく、人は動きやすくなります。一度の全社発表で終わらせず、朝礼や社内報など複数の接点で繰り返す設計が効いてきます。 

    人事評価にバリューを組み込む 

    バリューを人事評価の項目に入れると、社員は理念を実際の判断基準として扱うようになります。成果指標だけで評価される限り、バリューに沿った行動は後回しにされがちです。目標設定と振り返りの様式に観点を1つ加えるだけでも、期中に言葉を参照する回数は増えていきます。 

    体現した社員を全社で称える 

    バリューを体現した行動を全社で称える場をつくると、抽象的な言葉が具体例に変わります。四半期の表彰やチャットの称賛チャンネルなど、運用の重さは組織規模に合わせて選べます。具体的な事例として、サントリーグループの「有言実行やってみなはれ大賞」のように、数値的な成果を出した取り組みだけでなく、失敗を恐れずにチャレンジした姿勢そのものを称える仕組みにすると、全社の士気を高めるうえでより効果的です。誰のどの行動がなぜ評価されたのかをセットで共有すれば、他のメンバーも自分の仕事に置き換えて考えられます。 

    浸透度を調査して施策を見直す 

    浸透施策は、定点調査で効果を測りながら修正する前提で設計します。説明できる社員の割合や自分ごと化の度合いを定期的に測れば、発信が届いていない部署や階層を特定できます。数値の変化を追わずに施策を足していくと、コストだけが増えて手応えは得られません。 

    MVVの事例 

    では具体的にMVVとはどんなものなのか、有名企業の事例を見て考えてみましょう。

    株式会社リクルート

    • ビジョン :「Follow Your Heart」
    • ミッション :「まだ、ここにない、出会い。/ より速く、シンプルに、もっと近くに。」
    • バリュー :「新しい価値の創造」「個の尊重」「社会への貢献」

    こちらのMVVを題材に、順を追って分析してみます。

    まずビジョンの「Follow Your Heart」では、「一人ひとりが、自分に素直に、自分で決める、自分らしい人生」を企業の目指す世界観としています。そこに対して、ミッションの「まだ、ここにない、出会い」によって、リクルートは個人と企業をつなぎ、より多くの選択肢を提供することでミッションとして掲げている役割を果たしてきました。

    リクナビ、じゃらん、スタディサプリ、タウンワークなど一見バラバラにみえるような幅広い事業展開をしていますが、それは、ミッション(≒パーパス)にある「まだ、ここにない、出会い。」を作るビジネスを社会の様々な領域で行うからと言えます。そして、バリューの1つである「新しい価値の創造」では、「世界中があっと驚く未来のあたりまえを創りたい」といった、ミッションを達成するための行動指針を設定しています。

    トヨタ自動車株式会社

    • ビジョン「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」
    • ミッション「幸せを量産する」
    • バリュー「トヨタウェイ」

    トヨタと言えば、「自動車の会社」を想起する方が多いと思いますが、彼らは、車ではなく、幸せを量産することこそを、ミッション(≒パーパス)としています。また、なぜ自動運転を代表とする新しい技術の開発に立ち向かっているのかと言えば、新しい車を作りたいのではなく、車をはじめとした可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える挑戦をしているためと言えます。トヨタがなぜ、常に新しい挑戦をし続けられるのか、ブランドとしての強い軸を持ち続けられるのかは、こういった明確なビジョンやミッションが存在しているからでしょう。

    このように、ホールディングス化する企業も増えている中、MVVはブランドと事業をつなぎ、その会社ならではの価値を生み出すことから、その重要性が次第に増しています。これらの事例に挙げた企業に見られるように、ブランド価値が高いとされる企業は、必ずしもMVVという形でないとしても、その要素としてMVV を含んだブランドの志を明確化しているのです。

    ソニー株式会社 

    ソニーでは「Sony’s Purpose&Values」というページに「Purpose(存在意義)」と「Values(価値観)」の2つが表明されています。 

    • パーパス :「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」 
    • バリュー:「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」 

    ソニーは、各ブランド(≒グループ企業)の独自性を重んじているため、さらにその上位概念としてパーパスを位置づけ、ミッションとビジョンについては各グループ企業で掲げるという方針にしたということでしょう。バリューについては価値観や行動規範なので、これはむしろグループ全体で統一されていないと都合が悪いと言えます。このように、ブランドの戦略により、P-MVVでも多少カスタマイズして設計するのが実情です。 

    まとめ

    MVVは、企業がどんな未来を目指し、その実現のために何を果たし、日々どんな価値観を大切にするのかを一本の線でつなぐ枠組みです。3要素の役割を分けて理解し、ビジョンを起点に順を追って言語化すれば、未来像から現場の行動までが矛盾なく結ばれます。企業理念やパーパスとの階層を先に整理しておく作業も、社内での解釈のずれを防ぐうえで効いてきます。 

    一方で、言葉を掲げただけでは組織は動きません。「社会に貢献する」のようにどの企業にも当てはまる表現に落ち着いてしまえば、社員は自分の仕事と結びつけられません。策定の段階から階層や部門を越えたメンバーを巻き込み、完成後は日常業務への落とし込みと人事評価への組み込みまで設計してこそ、MVVは判断の拠りどころとして生き続けます。自社らしさがあり、具体的にイメージでき、心が動く言葉になっているかを点検する視点を持ち続けましょう。 

    大伸社コミュニケーションデザインでは、理念(MVV)開発からブランドコンセプトの策定までを支援するブランド策定支援と、理念の浸透を担うインナーブランディング支援を手掛けています。自社だけでは議論が進まないときや、掲げた言葉が現場に届いていないと感じるときは、外部の視点を交えた設計が突破口になります。MVVの策定や見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。 


    【参考文献】

    『手にとるようにわかる ブランディング入門』(金子大貴著、 一色俊慶著)

    1965年.『現代の経営』.ダイヤモンド社, (ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生訳)

    ソニー株式会社HP:ソニーグループについて
    https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/

    株式会社リクルートHP:ビジョン・ミッション・バリューズ
    https://recruit-holdings.com/ja/about/vision-mission-values/

    トヨタ自動車株式会社HP:トヨタフィロソフィー
    https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/philosophy/?padid=ag478_from_header_menu

    視覚会議:「バッグキャスティング」とは
    https://shikaku-kaigi.jp/pickup/backcasting/

    ディレクション

    村山 貴彦むらやま たかひこ

    株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン Webプランナー / ディレクター。ブランドをコアとしたコミュニケーションの企画とディレクションを行う。大手上場企業から中小企業までのブランディングプロジェクト、Webサイト企画・開発ディレクション支援、SEO支援などのブランディングコミュニケーション支援を実施。

    執筆

    小林 花こばやし はな

    株式会社大伸社コミュニケーションデザイン 2022年度新卒入社で、現在プランニングチームに所属。BtoBを中心とした様々な案件に携わる中で、企業価値向上におけるブランディングの奥深さを感じるように。このブログ執筆を通して、私自身も理解を深めながら、ブランディングの重要性をお伝えできたらと思います。

    監修者情報

    金子 大貴かねこ だいき 

    株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン チーフ ブランディングディレクター コピーライターとして、広告・宣伝のクリエイティブ開発の経験を経て、ブランディングに特化したプランニング・コンサルティングを担う現職へ。大手上場企業から中小企業まで、企業のリブランディングプロジェクト、新製品のコンセプト開発、ブランド浸透戦略立案などの幅広い業種業態でのブランディング支援を実施。
    著書に「手にとるように分かるブランディング入門」(2022年/かんき出版)。

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