
- 目次
BtoBブランディングの基本概念
・企業間取引におけるブランディングの意味
BtoBブランディングとは、企業が他の企業に対して自社の製品・サービス、ひいては企業そのものの価値や魅力を明確に伝え、信頼関係を築き上げるための戦略的な取り組みです。企業間取引は、一般消費者向けのBtoC取引と比較して、購買プロセスが複雑で、関係者の多さ、専門知識の必要性、長期的な取引などが特徴です。そのため、BtoBブランディングでは、単に製品の機能や価格だけでなく、企業のビジョン、専門性、信頼性などを効果的に訴求し、顧客との長期的なパートナーシップを構築していくことが重要となります。
ブランドイメージの構築とその重要性
・イメージの定義とその役割
ブランドイメージとは、企業や製品・サービスに対して顧客が抱く総合的な印象や認識を指します。企業理念、行動規範、製品・サービスの品質、顧客対応、広告宣伝、企業文化など、あらゆる要素がブランドイメージ形成に影響を与えます。
その中でも特にBtoB企業では、ブランディングにおいて、対象顧客が絞りやすく、また営業やアフターサービスなど対象となる顧客と接点を持つ『人』が企業として与える印象が大きくなります。
そのため、以下2点が最重要となります
①対象となる顧客の印象や評価を正しく理解できているか?
対象顧客から、現状どのようにみられているか?
今後中長期視点でどのように見られたいか?
顧客から現状どのような印象を持たれているかだけでなく、顧客が望む姿と自社が望む姿にGAPがないか?どのような顧客の望む姿を叶えたいか?自社がこの先社会に果たしたい役割と、顧客が自社に果たして欲しい役割などを理解す、できる限り一致させながら、その先を見据えた目標(ミッション・ビジョンを)掲げ、発信することが重要になります。
②社員が同じ理解で同じ方向を向いて行動が徹底されているか?
顧客に関与するすべての社員が、自分たちが現状見られている印象から、脱却するため、もしくはなりたい姿、見られたい姿に近づくために、どのような立ち振る舞いや行動をしなければならないか?経営層、マネージャーだけでなく、社員全員、社員自身が取るべき行動を理解し、実践することが重要になります。
では自社が望むイメージを構築するにはどのようにすればよいでしょうか?
・イメージ構築のプロセス
ブランドイメージの構築は、顧客とのあらゆる接点において一貫したメッセージを発信し続けることで実現します。社内文化の醸成、製品開発、マーケティング、営業活動、顧客サポートなど、あらゆる活動において、ブランドイメージを意識した戦略的な取り組みが必要です。
・イメージと顧客認知の関係
顧客は、ブランドイメージを通じて企業や製品・サービスを認識し、評価します。明確で一貫性のあるブランドイメージは、顧客の購買意欲を高め、競合との差別化に貢献します。
・企業イメージの構築と維持
企業イメージの構築と維持には、長期的な視点に立った戦略的な取り組みが不可欠です。顧客との継続的なコミュニケーション、社会貢献活動への参加、従業員満足度の向上など、多角的な活動を通じて、企業価値を高めていくことが重要です。
ブランド・エクイティの構成要素 ブランド・エクイティとは、ブランドが持つ資産価値を指します。ブランドロイヤルティ、ブランド認知度、ブランド連想、知覚品質、その他の独自資産(特許、商標など)といった要素で構成されます。強いブランド・エクイティは、企業の競争優位性を高め、収益拡大に貢献します。
BtoBブランディングの必要性
・競争環境の変化への対応
グローバル化やデジタル化の進展により、企業間の競争は激化しています。差別化が困難な状況下において、BtoBブランディングは、自社の強みを明確化し、顧客に選ばれる理由を提供することで、競争優位性を確立する上で不可欠な戦略となっています。
・人材確保と市場評価の向上
優秀な人材は、企業の成長に不可欠です。魅力的なブランドイメージを持つ企業は、優秀な人材を引きつけ、定着率を高める効果も期待できます。また、市場からの評価向上は、企業の資金調達や事業提携などを有利に進める上でも重要です。
・新規取引先の開拓と企業成長の支援
事業成長のためのブランディングの役割 BtoBブランディングは、新規顧客の獲得にも大きく貢献します。企業や製品・サービスの認知度を高め、信頼性を構築することで、新規取引先の開拓を促進し、事業の拡大を支援します。
・成長戦略とブランディングの連携
ブランディングは、企業全体の成長戦略と整合性をとりながら推進していくことが重要です。市場分析、顧客ターゲティング、製品開発、マーケティング、営業戦略など、あらゆる活動において、ブランディングの視点を組み込むことで、相乗効果を生み出し、持続的な成長を実現することができます。
・成功事例に見る成長のポイント
成功している企業は、明確なブランドアイデンティティを持ち、顧客との長期的な関係構築に注力しています。顧客の声を収集し、製品・サービスの改善に活かすことで、顧客満足度を高め、ブランドロイヤルティの向上につなげています。
BtoBブランディングの戦略
ブランディング戦略の立て方
企業のコアの決定
BtoBブランディングを成功させるには、まず自社の強みや独自性を明確にする必要があります。競合分析や顧客調査などを通じて、自社の強みと差別化ポイントを明確化し、顧客にどのような価値を提供できるのかを明確に定義します。
・ブランドアイデンティティの構築
企業のコアに基づき、ブランドの目指す姿や価値観を言語化し、ブランドアイデンティティを構築します。ブランドパーソナリティやブランドストーリーなどを設定することで、顧客との感情的なつながりを形成し、共感を呼ぶブランドイメージを確立します。
・クリエイティブの作成と社内浸透
ブランドアイデンティティを体現するロゴ、タグライン、ウェブサイト、パンフレットなどのクリエイティブを開発します。社内向けにもブランドブックなどを作成し、従業員一人ひとりがブランドを理解し、行動指針として共有することで、一貫性のあるブランド体験を提供できる体制を構築します。
・対外発信の方法と効果的なコミュニケーション
ウェブサイト、SNS、オウンドメディア、プレスリリース、広告など、様々なチャネルを活用し、ターゲット顧客にブランドメッセージを効果的に伝えます。顧客とのエンゲージメントを高めるために、双方向コミュニケーションを重視し、顧客の声を積極的に収集・分析することも重要です。
ブランディング戦略の実行
・マーケティング戦略との連携
BtoBブランディングは、マーケティング戦略と密接に連携して実行する必要があります。ターゲット顧客のニーズや行動を分析し、適切なチャネルとメッセージでブランドメッセージを伝えます。SEO対策やコンテンツマーケティングなど、デジタルマーケティングの手法を効果的に活用することで、より多くの顧客にリーチすることが可能となります。
・動画制作やBtoB広報の活用
動画コンテンツは、製品・サービスの魅力や企業のビジョンを効果的に伝えることができる強力なツールです。BtoB広報活動を通じて、メディア露出や業界紙への掲載などを目指し、企業の認知度向上とブランドイメージの向上を図ります。
・イベント出展やセミナーの活用
業界団体が主催する展示会やセミナーへの出展は、ターゲット顧客と直接コミュニケーションを図り、製品・サービスをPRする貴重な機会です。顧客との関係構築を深め、ビジネスチャンスの拡大につなげます。
ブランド戦略
ブランド戦略とは、ブランドを構築し、管理するための長期的な計画のことです。
ブランディングの言葉通り、ブランドをし続けることが重要になり、企業が得たい印象を一貫して貫くことが重要になると共に、自社のイメージに沿わない行動をしないことも重要になります。
ブランディングを通じて得たい効果・目標設定から、その達成のための具体的な施策とその効果を図る指標の策定までを含みます。
・ブランド戦略の目的と効果
ブランド戦略の目的は、ブランドを構築・強化し、企業の競争優位性を築くことです。成功的なブランド戦略は、顧客ロイヤルティの向上、新規顧客獲得の促進、価格競争からの脱却、企業価値の向上などに繋がります。
・ブランド戦略の立案と実行
戦略立案のプロセス
ブランド戦略の立案は、市場分析、競合分析、顧客分析から始まります。これらの分析に基づき、ブランドの目指す姿、ターゲット顧客、ブランドの提供価値などを明確化します。
・実行計画とその管理
明確化されたブランド戦略に基づき、具体的な行動計画を策定します。ウェブサイトのリニューアル、新商品の開発、プロモーションの実施など、具体的な施策を計画し、実行します。
・企業イメージの統合と展開
ブランド戦略は、企業全体で共有し、一貫して実行していくことが重要です。マーケティング部門だけでなく、営業部門、広報部門、人事部門など、全ての部門がブランド戦略を理解し、統一されたメッセージを発信していく必要があります。
・ブランド戦略の評価と改善
・戦略の効果測定
ブランド戦略の効果は、定期的に測定・評価する必要があります。顧客満足度、NPS調査、ブランドリフト調査、ブランド認知度など、ウェブサイトへのアクセス数など設定したKPIに基づき、効果を測定します。
・改善策の立案と実施
効果測定の結果に基づき、改善策を立案・実施します。市場の変化や競合の動向などを踏まえ、ブランド戦略を柔軟に見直し、改善していくことが重要です。
・BtoBブランディングの長期的取組について
Bブランディングは、長期的な視点に立った投資であり、その効果を測定することは、今後の戦略を見直し、改善していく上で非常に重要ですが、一朝一夕で効果が出るものではありません。
特にBtoBでは顧客が自社商材を認知し、購入し、またアフターサポートとして顧客と関わるライフタイムバリューが非常に長い為、実行した戦略や施策の何が効果をもたらしたか?を厳密に特定することは非常に難しい場合があります。
細かな測定で一喜一憂するのではなく、投資対効果は必要観点として計測していきながらも、経営層の理解と協力を得ながら、全社員でブランディング活動を継続的に推進していくことが非常に重要です。
・BtoBブランディングの長期的な効果について
・価格競争からの脱却や競争優位性の確立と維持
BtoB市場において、価格競争に巻き込まれることは、企業の収益を圧迫する要因となります。BtoBブランディングを通じて、価格以外の価値で差別化を図ることで、価格競争から脱却し、安定的な収益基盤を築くことができます。
・営業活動とビジネス成果の関連性
BtoBブランディングは、営業活動の効率化にも貢献します。ブランド認知度が高まり、企業や製品・サービスに対する理解が深まれば、顧客との商談もスムーズに進みやすくなります。
また顧客から信頼された状態で商談が進むことで、無駄な見積もりや提案活動などの労力が減り、本来すべき顧客の付加価値向上に取り組むことが可能になるため、顧客の満足度及び信頼が向上します。
顧客の信頼や満足度が向上すると、普段顧客と接しない社内スタッフにもいい影響を及ぼします。ありがとうや感謝を伝えて頂く機会が増えることで社員のやる気やモチベーションも上がるため、もっと顧客への付加価値向上に努める良い循環が生まれます。
ブランディング活動が順調に推進されると社内外の両面から好循環が生まれる為、結果的に売上も向上してくという正のスパイラルを生むことになります。
・BtoBブランディングの成功事例
・国内外の成功事例
・ソリューションブランディングのIBM
IBMは、ハードウェア企業からITソリューション企業へと転換するために、大規模なブランディングを実施しました。顧客のビジネス課題を解決するパートナーとして、コンサルティングサービスやソフトウェア製品を組み合わせたソリューションを提供することで、ブランドイメージを刷新しました。
「事業」ブランディングの成功事例
弊社でも数多くのブランディングを手がけているなかで、株式会社NTTドコモ様(以下、NTTドコモ)のOpen RANサービスブランド「OREX®」の事例をご紹介します。
「OREX®」は海外向け新事業であり、こちらのサービスブランディングをご支援しました。
サービスブランディングを実施する前は、海外向け新事業のサービス内容が分かりづらく、潜在顧客へのブランド浸透や社内での共通認識醸成に課題がありました。そこで弊社では、社内メンバーを巻き込んだワークショップを通じてブランド構築を提案・実施し、ネーミング、ロゴ、スローガン、ビジョン、世界観を策定しました。また、海外展示会でのブランド披露目を支援し、PRチームとして通年でサポート、事業本格化に伴う新会社設立も支援しております。
上記のような活動を通じて、社内メンバーの共通認識が醸成されたと共に、お披露目活動によって国内外でのメディア露出が増加し、サービス認知度が向上しております。
市場環境や顧客ニーズは常に変化しています。成功する企業は、変化をいち早く察知し、柔軟にブランド戦略を適応させています。その中でも信頼されるブランドは、自社が目指す姿を独りよがりではなく明確な目標として公表しながら、自社が社会に果たす役割や意義を提示し、そのために何を行っていくのか?が分かりやすい企業が信頼を得ております。
まずは目の前の顧客が自社を評価しているのか?自社はこの先何を目指すのか? から考えることが、取組の一歩になるでしょう。