現代の競争激しいビジネス環境において、人的資本経営は、成長戦略を描く上で重要な役割を果たします。
人的資本の概念は、従業員を単なる労働者(資源)ではなく、適切な投資によって価値が高まる資産として捉えます。
人的資源という言葉には、従業員を消費すべき資源(リソース)、つまりコストとして捉える考え方が根底にあり、人材にかける費用はなるべく抑えようという発想になりがちです。
人的資本の場合は、人材育成にかかる資金はコストではなく、組織の成長戦略にとって不可欠な投資として捉えます。人的資本という考え方は、企業や従業員の将来的な持続可能性により注目したものです。
- 目次
人的資本経営と採用ブランディング:持続可能な成長への鍵
人的資本経営を推進する中で必要かつ重要なことは、従業員のスキルや能力を企業の持続的な成長に欠かせない無形資産として捉え、戦略的に投資していく取り組みです。
コロナ禍や国際社会の緊張など、現代の社会は先行き不透明な変化に晒されています。
こうした社会状況において企業が生き残っていくためには、自社の経営戦略にとって、必要な人材、スキルや能力が何かを明確化し、それに沿った従業員の育成や登用が必要です。
ビジョンマッチングという考え方
新卒採用の場合、採用活動を行う中で、採用者と企業とのミスマッチは避けたいものとなります。
企業が大切にしている姿勢や文化、目指している姿を理解せずに、入社後にその姿勢になじめず会社を辞めてしまうと、採用者にとっても企業にとっても不幸なこととなります。
そのためには、まず企業側にて、自社の重要な使命(ミッション)やどんな社会の中でどのような役割を担い(ビジョン)、どんな強み(バリュー)を持って成長していくかを明確にする必要があります。
また上記根幹を学生に正しく伝わるようにすることが重要です。
採用者とのミスマッチを避けるための重要なことを以下に記載します。
①企業ビジョンと文化の明確化と整合性:
効果的な採用ブランディングは、企業の価値観とビジョンが正しく採用者に明確に伝わる必要があります。同様の価値観を共有する候補者を引き付け、また価値観にそぐわない採用者には事前にその旨を伝え、入社後の不幸が起こらないよう気を付ける必要があります。また、ビジョンや文化への共感を持って入社頂いた方とは、より一体感が高い、モチベーションの高い人材に成長していくことが期待できます。
②適切なターゲティング
自社の成長戦略に対して、どのような属性とスキルを持つ候補者が欲しいのか?を
明確に定義する必要があります。また自社にとっては優先順位を下げてもよいスキルがあればそのスキルも明確化しておきましょう。
自社に必要な学生のコンピテンシーが何か?を理解した上で学生とコミュニケーションすることで、会社の目標に貢献する可能性の高い学生を得る可能性が上がります。
③企業評価の向上
自社がいかに魅力的な会社であるか?自社の強みが何か?業界の中でどのようなポジションを取り、どのような成長戦略を描いているか?
サイトや発信する情報で明確に示す必要があります。左記情報の精度が高ければ高いほど高品質な候補者を引き付け、採用に関連する時間とコストを削減します。
④長期的な関係の構築
効果的なブランディングを通じて、潜在的な候補者との長期的な関係を築くことができますが、必要に応じて、インターンなど、事前に学生と接点を持ち自社ビジョンにふれさせる機会を作ることが有効です。
⑤採用ミスマッチの削減
明確で一貫した採用ブランディングによって、企業ビジョンと、採用者のビジョンをマッチングすることが可能になるため、早期離職の可能性とそれに伴うコストを減らします。
〇効果的な採用ブランディングの実施
効果的な採用ブランディングを実施するためには、まず企業自身のアイデンティティと文化を明確化し、提示する必要があります。
またすべての採用チャネルで一貫してコミュニケーションする必要があります。
ソーシャルメディア、企業ウェブサイト、ジョブフェア、キャンパスリクルートメントなど、さまざまなチャネルで一貫した印象形成を行うため、どの場面でも徹底されたクリエイティブ管理を行うことも、採用者の期待を損なわない為に重要なポイントとなります。
その際に現在の従業員がブランドアンバサダーとして活躍することになりますが、 従業員は、会社のブランドの最良の大使になることができます。
特に若手社員が自社ビジョンに共感し、体感した経験を自らの言葉で採用候補者に伝えることで、素晴らしい職場としての会社のイメージを強化できます。
結論
企業が現代のVUCAビジネス環境の中で、成長を行うためには、人的資本経営と効果的な採用ブランディングの戦略的統合が重要です。
採用戦略を全体的な企業ビジョンと文化と整合させ、強力な雇用主ブランドを通じて効果的にコミュニケーションすることにより、自社にとって適切な候補者を引き付け、ミスマッチを減らし、持続可能な成長軌道を促進することができます。
このアプローチは、離職率の低下と生産性の向上という組織の利益だけでなく、将来の才能を引き付け、既存の従業員を維持するためのポジティブでエンゲージメントの高い職場文化にも貢献します。