Health2.0 ASIA-JAPAN 2016」レポート/ヘルスケア×ITの今後とは【2/2】

header-picture

こんにちは。プランナー改め、広報の吉田です。本日は「Health2.0 ASIA-JAPAN 2016」レポートの後編をお届けします。(前回の記事はこちらから)先日はAI(人工知能)を中心にお話ししましたが、今回は「ビッグデータ」と「Patient Experience=患者エクスペリエンス」についてご紹介いたします。

Health2.0_ASIA-JAPAN_1.jpg

会場ではスピーチだけではなくセッションも行われました。

 


電子カルテに含まれるビッグデータを活用する、テキスト解析AI


現在、多くの病院では電子カルテを導入しています。紙のカルテは自然災害によって消失してしまう恐れがありますが、電子カルテはバックアップをとることで万が一に備えることができます。アメリカでの普及率は87%といわれており、竜巻が起きた後も継続して治療ができたという事例もあります。そんな電子カルテには患者さんに関する大量のデータが含まれていますが、有効利用されているとは言い切れないのが現状だそうです。

Health2.0_ASIA-JAPAN_2.jpg

そんな中、本イベントで株式会社FRONTEOヘルスケアの武田秀樹氏が紹介したのは、電子カルテ内のビッグデータを活用した「転倒・転落予測システム」。このシステムは、既存の電子カルテを解析することで患者さんの転倒、転落を予測するというもので、現在実験段階だそうです。転倒は入院を長引かせる原因となるため、看護師は患者さんが転ばぬよう様々な注意を払ったり、サポートを行っているのですが、それがなかなかの負担だといいます。

 

この「転倒・転落予測システム」は、大量のテキストデータを解析し、予測まで行うことができるAI、「KIBITが使用されており、人間に代わって諸々の判断行います。大量のデータからユーザーの意図に合致する情報を抽出することで、電子カルテを自動で解析し、転倒、転落を予測。言語解析を行うため、主観が排除された精度の高い結果を出すことができるのです。また、既存の電子カルテの情報をそのまま活用できるのが、このシステムの特徴だといえます。現在は実験中ですが、実用化できれば、看護師は医療行為に専念することが可能となり業務改善が期待できます。最後に武田氏は、「近い将来、若い看護師はAIから知見を学ぶことになるだろう」とおっしゃっていたのが大変印象的でした。

 


忘れてはいけない!「Patient Experience」


Health2.0_ASIA-JAPAN_3.jpg

現代における、「Patient Experience」の重要性についてスピーチしたのは、Mount Sinai Health SystemYosuke Chikamoto氏。Patient Experienceとは、患者の気持ちを尊重することを重視した患者の視点に立った医療です。

 Health2.0_ASIA-JAPAN_4.jpg

まず初めに、「現在、病院はレストランやストアのように快適さを評価される時代になっている」とChikamoto氏は話します。これまで他院との差別化や患者さんの満足度の向上を意識し、設備に投資を行ってきた病院も多くあり、アメリカには、高級ホテルとの境がないような病院もあるそうです。しかし、いくら施設にお金をかけても、患者さんの満足度には直結はしないといいます。その例として挙げたのは「病院においての大理石のベンチ」。大理石のベンチは、ホテルへ非日常を味わいにきた方にとっては良いものかもしれませんが、具合が悪い方にとっては「ただの冷たいベンチ」なのです。

 Health2.0_ASIA-JAPAN_6.jpg

このような、ミスマッチは「病院を豪勢にすることで患者さんは喜ぶ」という病院側の思い込みによるものから起きています。では、「患者さんに負担をかけない、ホッとできる空間」とは一体なんでしょう?そう考えた時に大切となるのが、「Patient Experience」。実際に患者さんの視点に立ち、経験をたどって物事を考えることで、理想の病院の姿が見えてきます。それを行うために、実際に患者の生の声を聞くことや病院での行動を撮影することも効果的だといいます。ユーザーの視点を生かして病院の問題点を探り改善していくことは、病院をホテル化するよりもはるかに安価な方法で安心できる空間作りを行えるのです。改善対象の例としては「清潔ではないトイレ」、「乱雑で今にもカルテの取り違いが起きそうなナースステーション」などが挙げられていました。

 


まとめ


AIやビッグデータなど、最先端の技術が話題になる現代ですが、患者さんやユーザーの気持ちになってものづくりや環境づくりを行うことは、普遍的に大切なことだと実感しました。また、大伸社はグループ全体で「ユーザー視点」を大切にしており、グループ会社のmctではすでに「Patient Experience」の調査を行っているため、馴染み深い話に感じました。

 写真 2016-11-30 16 00 57.jpg

(DCDでは先月、就活生とともに就活中の経験を辿るワークショップセミナーを開催しました)

 

Health2.0 ASIA-JAPAN 2016」は世界で起きている、ヘルスケア×ITの新たな技術に触れることができるとても刺激的なイベントでした。終了後には「会場で受けた驚きは、数年後には当たり前になっているのだろう」と感じている自分に対しても驚きました。それほど、技術の進化はハイスピードで進んでいるようです。機会があればぜひまた参加したいと思います!以上、吉田がお届けしました。

 

Topics: セミナーレポート, ヘルスケア


Recent Posts

事例紹介:製薬業界におけるCX変革のためのトレーニング

read more

2024年4月から合理的配慮の提供が義務化!WEBサイトユーザビリティとの関係は?

read more

人的資本経営を推進する企業の「採用戦略」として重要なこと

read more