CES2022 注目のプレゼンテーション

header-picture

こんにちは、後藤です。

先日の1月5日~7日にCES2022が開催されました。CESは毎年ラスベガスで開催されているデジタルテクノロジーの国際見本市で、もともとは家電の新商品を発表する展示会でしたが、近年は車やデジタル機器の展示が多くなり、それらの企業のビジョンやコンセプトが発表される場所へと変わりつつあります。

今回はそのなかから個人的に注目した発表やコンセプトをピックアップしてご紹介したいと思います!

■Samsung

基調講演でかなり振り切った発表をしていたのはSamsungです。Samsungは基調講演の多くを環境への取り組みに割き、環境保全とテクノロジーの両立を謳いました。具体的には下記の取り組みを推し進めることを宣言しています。

 

・製品へのリサイクル素材の使用。

・梱包の簡素化、環境に配慮した素材の使用。

・製品の待機電力削減。

・電子製品の回収、再利用。

・電気使用量の可視化。

 

また、この基調講演の中で、SamsungはPatagoniaと手を組むことも発表しました。この協業により洗濯機が生み出すマイクロプラスチックの削減に取り組むとしています。マイクロプラスチックは微小なプラスチック粒子のことで、海洋生物や人体に悪影響を及ぼすことが懸念されています。Samsungが環境のことを真剣に考えている企業である、という強いメッセージを打ち出そうとしていることが伝わる印象深い発表でした。

[CES 2022] Together for tomorrow_ Full Replay _ Samsung 8-32 screenshot

[CES 2022] Together for tomorrow_ Full Replay _ Samsung 16-16 screenshot

[CES 2022] Together for tomorrow_ Full Replay _ Samsung 18-55 screenshot

https://www.youtube.com/watch?v=-Hz_Wdu50aQ&ab_channel=Samsung
より

 

■Hyundai

Hyundaiは日本では馴染みがないかもしれませんが、韓国の大手自動車メーカーです。Hyundaiはそのプレスカンファレンスで自動車にとらわれないモビリティの未来像をプレゼンしました。

Hyundaiが思い描く未来の交通手段として紹介されたのは、パーソナルモビリティポッドと輸送ポッドです。それぞれバスのような母艦に格納可能で、シャトルバスとして都市間の移動と、ハブ地点から自宅までの短距離の移動を両立することができるようになっています。パーソナルモビリティポッドは高齢化社会における移動の問題を、輸送ポッドは物流におけるラストワンマイルの問題を解決します。また、輸送ポッドにはSpotが格納されており、ポッドから出てきたSpotがポッド内の荷物を運び出すことができるようになっています。SpotとはBoston Dynamicsが開発した犬型ロボットのことです。Boston Dynamicsは蹴られても立ち直る犬型ロボットや、人間顔負けのアクロバットを披露する2足歩行ロボットなどで有名で、動画でご覧になったことがある方も多いと思います。Hyundaiは昨年、Boston Dynamicsを買収完了しており、今回のプレゼンテーションはそのBoston Dynamicsと共に描く未来を示すものになっています。

Hyundai x CES 2022 _ Move Things Beyond Imagination 0-45 screenshot

Hyundai x CES 2022 _ Move Things Beyond Imagination 1-3 screenshot

https://www.youtube.com/watch?v=Zz50vsvmFRc&ab_channel=HyundaiWorldwide
より

Hyundaiからはもう一つ、面白いコンセプトが発表されました。それは「移動中の自動運転車の社内からメタバースに接続。実在のロボットを遠隔操作し、火星にテレプレゼンスする」という聞いただけでは混乱してしまうようなコンセプトです。テレプレゼンスとはロボットを遠隔操作し、その場にいるような臨場感を提供するシステムのことです。火星に配置した犬型ロボットSpotには各種センサーが取り付けられており、現地の風や土の硬さ、その表面温度を感じることができます。Hyundaiはこのシステムをメタモビリティと称し、メタバースにタンジブル(触知可能)な体験と、現実との双方向性を与えようとしています。まさに映画『アバター』の世界そのものです。一見、突拍子もないコンセプトに見えますが、ここ数年で一気にリモート会議が普及し、PC画面を共有することが当たり前になったことを考えると、将来的にはあり得ない光景ではないのかもしれません。

Hyundai x CES 2022 _ Expanding to New Realities with Metamobility 1-10 screenshot

Hyundai x CES 2022 _ Expanding to New Realities with Metamobility 1-38 screenshot

https://www.youtube.com/watch?v=Zz50vsvmFRc&ab_channel=HyundaiWorldwide
より

 

■Beyond Imagination

アメリカのスタートアップ、Beyond ImaginationはVR操作ロボットBeomniを展示しました。BeomniはVRヘッドセットとグラブ型のモーションコントローラーで操作することができるロボットです。遠隔で操作することもできるので、自宅から遠く離れた工場や施設で働くことも可能になります。

展示では調理をしたり、水を注いだりといったことがデモンストレーションされており、比較的細かい操作まで可能なようでした。今後はより精度が高まっていくことが期待できるでしょう。

Hyundaiのメタモビリティと同じように、距離や接触などの物理的な制約を無くそうという意欲的なプロダクトになっています。

CNET「Meet Beomni: Your new robot avatar」
https://www.youtube.com/watch?v=chIFBTHyEaE&ab_channel=CNET

 

■まとめ

 今回は一部しかご紹介できませんでしたが、この他にも興味深い発表や展示は多くありました。そしてそのほとんどが、世間の関心を反映してか、コロナとSDGsに関連するもののように思われました。また、その見せ方もどんな最新テクノロジーがあるかより、テクノロジーでどんな社会問題を解決するかを念頭に置いた発表や展示が多いように見受けられました。

まとめると、社会問題とその解決方法としては、下記のソリューションが対応していたように思われます。

 

・コロナ禍:ヘルスケア(診断デバイス、フィットネス、フードテック)

・自粛:スマートホーム、デリバリーロボット、マッサージ、メタバース

・高齢化:アクセスビリティ対応ロボット、パーソナルモビリティ

・多様性:可視化、パーソナライズ

 

環境問題に限らず、ヘルスケアや多様性、教育という観点も含めて、SDGsが提唱する社会問題にどう取り組んでいるか、企業が厳しく問われる時代になってきたことを痛感する展示会でした。

Topics: レポート


Recent Posts

事例紹介:製薬業界におけるCX変革のためのトレーニング

read more

2024年4月から合理的配慮の提供が義務化!WEBサイトユーザビリティとの関係は?

read more

人的資本経営を推進する企業の「採用戦略」として重要なこと

read more