生成AIがプロマネ業務に浸透しはじめ、議事録やスケジュール草案などは、今後ますます「人がやらなくてよい仕事」側へ移っていきます。
その一方で、明確に 「AIに置き換わらない領域」 があります。
ここを人間のPMが担い続けるかどうかが、プロジェクトの成否を左右します。

合意形成(「正しい」ではなく「納得できる」決め方)

プロジェクト案件では、答えが一つに決まらない判断が連続します。
そこでは論理ではなく「温度・社内政治・序列・顔」の要素が働きます。

AIは正しさには強いですが、
「この場の人たちが納得して進められるか」 の判断はできません。
ここはPMが人間同士の呼吸を読み、進め方を設計する領域です。

やらない判断(守備範囲・優先順位・撤退ラインの提示)

プロジェクトでは「足し算」より「引き算」が効果的な場合があります。
しかし現場では「これも入れてほしい」が常に生まれ続けます。

AIは要件を膨らませることは得意ですが、
「やらない・今はやらない・優先度を下げる」 という政治的かつ感情的な判断は苦手です。
ここはPMがプロとして線を引く必要があります。

関係者の翻訳(社内事情・決裁ロジックの構造理解)

実は制作そのものより、社内決裁の構造の方が実態として難しいことが多いのも現実です。
・誰が本当の決裁者か
・誰が「口は出すが責任は取らない人」か
・誰が最終段階で”ひっくり返す可能性”を持つのか

こうした背景は、言語化されず暗黙に存在します。
AIは見えている情報しか扱えません。
「見えていない前提を読み、織り込んで進め方を変える」 これは人間のPMの仕事です。
もし暗黙知としてPMのみが意識をしているのであれば
ステイクホルダーマップに可視化して、プロジェクトメンバーと共有することも大切です。

場の設計(揉めないための順序・当て方・出し方)

同じ会議・同じ資料でも、
「誰が」「どの順で」「どの状態で見るか」で結果は変わります。

AIは資料を作ることはできますが、
「合意を作れる順番」「摩擦を起こさない出し方」 は設計できません。
ここを設計する人がいることで、プロジェクトを成功へと導くことができます。

まとめ:合意形成は「お互いを守る仕組み」

AIが担うのは「作業」
PMが担うのは「進め方」

AIを使うか否かではなく、
AIに作業任せるためにPMがどこに集中するのか が問われる時代になりました。
プロジェクトの価値はアウトプットではなく「合意形成された状態」を作ること。
その部分だけは、しばらくAIには任せられません。